2026年01月25日
インプラント治療を受けた後、「これで一生安心」と思っていませんか?
実は、インプラントを長持ちさせるためには、治療後のメンテナンスが極めて重要です。適切なケアを怠ると、せっかく高額な費用をかけて埋め込んだインプラントが数年で使えなくなってしまうこともあります。
インプラントの平均寿命は約10〜15年とされていますが、メンテナンス次第で20年、30年と長く使い続けることも可能です。逆に、ケアを怠れば10年を待たずに問題が発生するリスクも高まります。
本記事では、インプラントを長持ちさせるために必要なメンテナンスの頻度、費用相場、セルフケアの方法、そして最も注意すべき「インプラント周囲炎」の予防法について、歯科医師の視点から詳しく解説します。
インプラントのメンテナンスが必要な理由

インプラントは人工物のため、虫歯にはなりません。
しかし、だからといって歯磨きやメンテナンスを怠ってよいわけではありません。インプラントを取り囲む歯茎や顎の骨は、患者さん自身の生身の組織です。これらの組織が健康でなければ、インプラントは長持ちしないのです。
インプラントを長持ちさせるため
インプラントの寿命は、定期的なメンテナンスやクリーニングを受けるかどうかによって大きく変わります。過去には最長40年インプラントを保てたという例もあるほど、メンテナンス次第で半永久的に使い続けられる可能性もあるのです。
入れ歯が3〜5年程度、ブリッジが7〜8年程度で寿命を迎えるのに対し、インプラントは適切なメンテナンスを行えば10〜15年、さらにはそれ以上の長期使用が可能です。この点からも、メンテナンスの重要性が理解できるでしょう。
インプラント周囲炎の予防のため
インプラント周囲炎は、インプラント特有の「歯周病」です。
インプラント周辺に歯垢や歯石が蓄積することにより歯周病菌が増殖し、一般的な歯周病よりも進行が早く、放置されると炎症はどんどん進行していき、顎の骨が破壊されてしまいます。その結果、インプラントを支えきれなくなり、最悪の場合インプラントがグラグラする、抜け落ちるなどの危険が高まります。
神経が通っていないインプラントは痛みも感じにくいことから早期発見が難しいとされています。そのため、定期的なメンテナンスを受けて予防・早期発見することが非常に重要なのです。
残っている健康な歯を維持するため
インプラント周囲炎になってしまうと、残っている自分の歯にも影響が出ます。歯周病は放っておくとお口全体に広がっていくからです。
メンテナンスではインプラント以外にも、残っている他の歯や歯茎などお口の状態をトータルでチェックするとともに、クリーニングや歯石の除去を行ってもらえます。つまり、メンテナンスによって残っている健康な歯を維持し、失うリスクを大幅に軽減することができるのです。
トラブル時に保証を受けられる可能性が高い
インプラント治療では、患者さんの治療後の不安や金銭的負担を軽減するために「保証制度」を設けている歯科医院がほとんどです。
この保証というのは、日常生活でインプラントが欠けたり割れたり、抜けたりした場合に、再治療の費用を無料または減額するというものです。ただし、この保証を受けるための条件として、「定期的なメンテナンスを受けていること」が求められています。つまり、メンテナンスを受けていない場合、保証を受けられない可能性が高いのです。
インプラントは自由診療でただでさえ高額な治療となります。保証が受けられないと金銭的負担も大きくなるため、万が一の不具合に備えてメンテナンスをしっかり受けておく必要があるでしょう。
出典高田歯科医院「インプラントのメンテナンス費用と寿命を延ばすメンテナンスの必要性」(2025年12月)より作成
インプラントのメンテナンス頻度と費用相場
では、実際にどのくらいの頻度でメンテナンスを受ければよいのでしょうか?
メンテナンスの頻度
インプラント治療後のメンテナンス頻度は、患者さんの口腔内の状態によって異なりますが、一般的には3〜6カ月に1回の通院が推奨されています。
治療直後は口腔内の状態が安定していないため、1〜2カ月に1回程度の頻度で通院し、経過観察を行うことが多いです。その後、状態が安定してくれば、3〜6カ月に1回のペースに移行します。
ただし、喫煙習慣がある方や歯周病のリスクが高い方、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、より頻繁なメンテナンスが必要になる場合があります。
メンテナンスの費用相場
インプラントのメンテナンスは自由診療となるため、費用は歯科医院によって異なります。
一般的な費用相場は、1回あたり3,000〜5,000円程度です。高い場合でも、基本的には10,000円前後でおさまることが多いでしょう。メンテナンスの内容には、口腔内のチェック、クリーニング、レントゲン撮影、噛み合わせの確認などが含まれます。
年間で考えると、3カ月に1回のメンテナンスを受けた場合、年間12,000〜20,000円程度の費用がかかる計算になります。この費用を高いと感じるかもしれませんが、インプラントを長持ちさせ、再治療の高額な費用を避けるためには必要な投資と言えるでしょう。
出典高田歯科医院「インプラントのメンテナンス費用と寿命を延ばすメンテナンスの必要性」(2025年12月)より作成
インプラント周囲炎とは?症状と進行段階

インプラント周囲炎は、インプラント治療後に最も注意すべき病気です。
インプラント周囲炎の定義
インプラント周囲炎とは、インプラント治療後、インプラントの周りの歯茎や顎の骨に炎症が起きる病気です。インプラント周囲炎は歯周病の一種であり、お口の中にひそむ歯周病菌(カビ菌など)によって炎症がひき起こされます。
天然歯に起きる歯周病と同じメカニズムで発症しますが、インプラント周囲炎の進行速度は天然歯の歯周病に比べて約10〜20倍速いという特徴があります。これは、インプラントには天然歯のような「歯根膜」という刺激を受け取るクッションがないため、炎症が直接骨に伝わりやすいためです。
インプラント周囲炎の症状
インプラント周囲炎は自覚症状が出にくいため、早期発見が難しい病気です。進行度別に症状をまとめると、以下のようになります。
軽度の症状
- 歯磨きの時にたまに血が出るが、どこから血が出るか分からない
- インプラントを歯磨きするとたまに痛む
中度の症状
- 歯磨きをするとインプラントから血が出る
- インプラントの歯茎が腫れたような感じがする
- 食事の時にたまにインプラントで噛むと違和感がある
重度の症状
- インプラントを触るとグラグラする
- インプラントを触ると血と膿が出る
- インプラントで噛むと違和感や痛みがある
- 卵や玉ねぎが腐ったような強い口臭がする
- 歯茎が大きく下がりインプラントのアバットメントが露出する
もし少しでも当てはまる症状があれば、すぐに歯科医院に相談し検診を受けましょう。
インプラント周囲粘膜炎との違い
インプラント周囲粘膜炎は、歯肉炎がインプラントで起こっている状態を言います。インプラントの周りの歯茎が炎症を起こしており、歯茎が赤く腫れていることを指します。
歯茎のみ炎症し、顎の骨が溶けないのが特徴です。インプラント周囲炎の初期の状態でもあるので、このままだとインプラント周囲炎へと進行していきます。この段階で適切な処置を受けることが、インプラントを長持ちさせる鍵となります。
出典あわた歯科医院「『インプラント周囲炎』に注意!セルフケアと定期メンテナンスで予防」(2023年12月)より作成
インプラント周囲炎の原因
インプラント周囲炎を予防するためには、まず原因を理解することが大切です。
セルフケア・メンテナンス不足
インプラント周囲炎を発症する主な原因は、毎日のセルフケア(歯磨き+歯間清掃)不足、および歯科医院で受ける定期メンテナンスの不足です。
セルフケア・メンテナンスが不足すると口腔状態が不衛生になるほか、磨き残した歯垢によってお口の中で歯周病菌が増殖し、インプラントと歯茎の境目にある歯周ポケットの内部に歯周病菌が侵入しやすくなります。歯周ポケットに侵入した歯周病菌はポケットの内部で毒素を出し、歯茎や顎の骨の炎症をひき起こします。
生活習慣
喫煙習慣や歯ぎしりなどの生活習慣は、インプラント周囲炎のリスクを高めます。
喫煙すると血管の収縮が起こり、血管内に酸素が上手く運ばれなくなります。そうすると栄養が歯茎に届きにくくなってしまいます。また、身体の免疫能力も落としてしまうので、歯周病に感染した時に発症がしやすくなってしまうのです。
歯ぎしりもまた、歯周病を進行させます。歯ぎしりは自分の無意識で行っていることがほとんどで、無意識の力はとても強く、通常の食事の2〜3倍の力が加わります。普通の歯は、歯への刺激を受け取ってくれる「歯根膜」というものがありますが、インプラントにはこれがないので、直接刺激が顎の骨に伝わります。この刺激が炎症につながり、インプラント周囲炎を引き起こします。
糖尿病
糖尿病は、インプラント周囲炎のリスクを高める全身疾患の一つです。
糖尿病により血糖値が高い状態が続くと、身体の免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、傷の治りも遅くなるため、インプラント周囲炎が発症しやすく、進行も早くなる傾向があります。糖尿病の方は、血糖値のコントロールとともに、より頻繁なメンテナンスが必要になります。
出典ヴェリタスインプラントサロン横浜「インプラント周囲炎とは?原因や治療法・セルフケアの仕方を紹介」より作成
インプラントを長持ちさせるセルフケアの方法

インプラントを長持ちさせるためには、毎日のセルフケアが欠かせません。
毎日の歯磨きをしっかりと行う
インプラント治療を行い人工歯根を埋め込んだ後には、歯の部分にあたる上部構造が人工物となりますので、虫歯になることはありません。しかし、インプラント治療後に歯磨きを怠ってしまうとお口の中の歯垢(プラーク)が増えることで歯が汚れ、不衛生な状態となってしまいます。
インプラントも天然の歯と同じように汚れがつくので、インプラント治療後には天然の歯と同じように「毎日の歯磨きをしっかりと行うこと」が最も大切なセルフケアのポイントとなります。
「正しい磨き方」で歯を磨く
インプラント治療後のセルフケアで最も大切な「毎日の歯磨き」ですが、歯磨きを行う際には正しい磨き方で歯を磨くことが重要です。
歯ブラシの毛先を使い細かく歯ブラシを振動させて磨く
インプラント治療後に行う歯磨きの方法としては、歯磨きをする時に歯ブラシの毛先の部分を優しく歯の表面にあてながら、細かく歯ブラシを振動させて磨くようにする方法がおすすめです。これは、通常の歯磨きの際にも基本となる磨き方ですが、インプラント治療後にも同様に清掃効果の高い磨き方となります。
歯ブラシは「親指・人差し指・中指」で持つようにする
歯ブラシを持つ時には、親指・人差し指、そして中指の3本の指でペンを軽く持つようにすることで、小刻みに歯ブラシを動かしやすくなります。3本の指で歯ブラシを持つ方法は歯磨きの際に必要以上に力が入りすぎるのを防ぐことができ、歯と歯茎の境目など、細かい部分も磨きやすくなる優れた方法の一つです。
歯を磨く時には「順番を決めて」磨く
プラークの取り残しを防ぐため、歯を磨く時には「順番を決めて」磨くことをおすすめします。歯を磨く順番は患者さんによってそれぞれ異なりますが、磨き残しを防ぐためには上あごの歯の裏側を磨く時に「ぐるっと一周して裏側だけを磨く」ようにする方法がおすすめです。同様にして歯のかみ合わせの部分や歯の表側も一周させ、その部分だけを磨くことで、磨き残しが出にくくなります。
デンタルフロスや歯間ブラシを使う
歯と歯のすき間にある汚れを落とすには、歯ブラシを使って行う歯磨きだけでは不十分です。
歯と歯のすき間に溜まったプラークや食べカスは、デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで効果的に汚れを落とすことができます。特にインプラントと天然歯の間、インプラント同士の間は汚れが溜まりやすいため、丁寧にケアすることが大切です。
歯磨き粉を使う場合は「細かい粒子」の物を選ぶ
インプラント治療後に行う歯磨きの時に、粒の粗い「つぶつぶタイプ」などの歯磨き粉を使ってしまうと歯磨き粉の粒子が埋め入れたインプラントと歯茎の間に入り込み、炎症を起こしてしまう恐れがあります。
そのためインプラント治療後に行う歯磨きでは粒子が細かい歯磨き粉を使うようにするか、デンタルリンスなどの洗口剤を利用して歯磨きを行いましょう。なお、歯磨き粉や洗口剤は必ずしも歯磨きの際には必要な物ではありませんので、何も使わずに水で歯ブラシを濡らして歯磨きをするのもおすすめの方法です。
外出先でも常に歯を磨くようにする
外出先や勤務先などでおやつや食事を食べた後には、必ず歯を磨くようにしましょう。
毎食後に歯磨き+歯間清掃をするのがベストですが、時間が取れない・忙しい場合は寝る前の歯磨き+歯間清掃だけはしっかり行うようにしましょう。就寝中は唾液の分泌が減少し、細菌が繁殖しやすい環境になるため、寝る前のケアは特に重要です。
出典あいデンタルクリニック「インプラント歯周炎を防ぐ!-セルフケア7つのポイント」より作成
歯科医院で受けるメンテナンスの内容
セルフケアだけでは限界があります。
歯科医院で受ける定期メンテナンスは、インプラントを長持ちさせるために欠かせません。
口腔内のチェック
メンテナンスでは、まずインプラントの状態や周辺組織のチェックを行います。インプラントがしっかり固定されているか、歯茎に炎症がないか、噛み合わせに問題がないかなどを確認します。
また、残っている天然歯の状態もチェックし、虫歯や歯周病の早期発見に努めます。お口全体の健康状態を把握することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
プロフェッショナルクリーニング
歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングでは、セルフケアでは取り除けない歯石や頑固な汚れを専用の器具を使って除去します。
インプラント周辺は特に丁寧にクリーニングし、歯周ポケット内部の清掃も行います。この処置により、インプラント周囲炎のリスクを大幅に軽減することができます。
レントゲン撮影
定期的にレントゲン撮影を行い、インプラントを支える顎の骨の状態を確認します。
骨の吸収が進んでいないか、インプラント周囲炎の兆候がないかなど、目視では確認できない部分をチェックします。早期に問題を発見することで、適切な対応が可能になります。
噛み合わせの調整
噛み合わせのバランスが崩れると、インプラントに過度な負担がかかり、周囲の骨や歯茎にダメージを与える可能性があります。
メンテナンスでは噛み合わせの状態を確認し、必要に応じて調整を行います。特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、マウスピースの作成を提案されることもあります。
ブラッシング指導
患者さん一人ひとりの口腔内の状態に合わせて、効果的なブラッシング方法を指導します。
磨き残しが多い部分や、改善すべきポイントを具体的にアドバイスすることで、セルフケアの質を高めることができます。インプラント周辺の清掃方法や、デンタルフロス・歯間ブラシの使い方なども丁寧に説明します。
むらせ歯科茂原院のインプラントメンテナンスシステム

当院では、科学的根拠に基づいたオリジナルのメンテナンスシステムを導入しています。
患者さんオリジナルのメンテナンスプログラム
患者さんごとにカスタマイズしたメンテナンスプログラムを作成し、口の状態やインプラントの管理を徹底して守っています。
患者さんの口腔内の状態、生活習慣、全身の健康状態などを総合的に評価し、最適なメンテナンス頻度や内容を提案します。喫煙習慣がある方や糖尿病の方など、リスクが高い方にはより頻繁なメンテナンスを推奨しています。
インプラント周囲炎の予防と管理
インプラント周囲炎は、天然歯の歯周病と同様の病気ですが、進行が10〜20倍速いという特徴があります。
当院では、この危険性を十分に理解した上で、予防に力を入れています。定期的なメンテナンスにより、インプラント周囲炎の早期発見・早期治療を実現し、患者さんのインプラントを長期的に守ります。
安心の10年保証システム「ガイドデント」
当院では10年の保証期間を設けています。
さらに、当院はインプラント第三者保証機関「ガイドデント」に認定されているので、一般的には保証対象にならないケースでも保証できます。偶発的な事故(交通事故など)も保証の対象となり、引っ越しした場合でも全国の認定医院で同じ条件で保証を受けることができるのが特徴です。
ただし、この保証を受けるためには、定期的なメンテナンスを受けていることが条件となります。
まとめ
インプラントを長持ちさせるためには、治療後のメンテナンスが極めて重要です。
定期的な歯科医院でのメンテナンスと、毎日のセルフケアを継続することで、インプラントの寿命を大幅に延ばすことができます。メンテナンスの費用は1回あたり3,000〜5,000円程度、頻度は3〜6カ月に1回が一般的です。この投資により、高額な再治療を避け、インプラントを20年、30年と長く使い続けることも可能になります。
特に注意すべきは、進行が早い「インプラント周囲炎」です。セルフケア不足や喫煙習慣、歯ぎしりなどがリスク要因となります。毎日の正しい歯磨き、デンタルフロスや歯間ブラシの使用、定期的なメンテナンスにより、インプラント周囲炎を予防することができます。
当院では、患者さん一人ひとりに合わせたメンテナンスプログラムを提供し、インプラントを長期的に守るサポートを行っています。インプラント治療を受けた方、これから受ける予定の方は、ぜひ定期的なメンテナンスの重要性を理解し、実践していただきたいと思います。
インプラントは適切なケアにより、一生涯使い続けることも夢ではありません。あなたの大切なインプラントを守るために、今日から正しいメンテナンスを始めましょう。
2026年01月24日
歯列矯正の痛み、本当のところは?
「矯正治療って、やっぱり痛いんですよね……」
カウンセリングでこの質問をいただくたびに、患者さんの不安な表情が目に浮かびます。歯列矯正を検討している方の多くが、痛みへの恐怖心から治療をためらっているのが現状です。実際、インターネットや友人から「矯正は痛い」という情報を耳にすると、一歩踏み出すのが怖くなってしまいますよね。
しかし、ここで知っておいていただきたいことがあります。現代の矯正治療は、技術の進歩により痛みのコントロールが格段に向上しているということです。確かに痛みがゼロというわけではありませんが、「耐えられないほどの痛み」が続くことはほとんどありません。
東京歯科大学での臨床経験を通じて、私は数多くの患者さんの矯正治療に携わってきました。その経験から言えるのは、痛みの感じ方には個人差があり、適切な対処法を知っていれば快適に治療を続けられるということです。この記事では、矯正治療における痛みのメカニズムから具体的な対処法まで、詳しくお伝えしていきます。
矯正治療で痛みを感じる3つのタイミング
矯正治療中の痛みは、主に3つのタイミングで現れます。それぞれのタイミングで痛みの性質や強さが異なりますので、順番に見ていきましょう。
装置を初めて装着したとき
最も痛みを感じやすいのは、矯正装置を初めて装着した直後です。これまで動かなかった歯に、初めて矯正力が加わる瞬間だからです。
矯正力は20〜100グラム程度の非常に弱い力を持続的にかけます……これは1円玉20〜100枚程度の重さということです。決して強い力ではないのですが、多くの方が「歯が浮くような感覚」や「噛むとジンと響くような痛み」を経験します。これは、歯が動き始めるときに歯の周りの組織が反応しているためです。
痛みのピークは装着から1〜2日目で、多くの方は4〜6時間後あたりから違和感が出始めます。その後は徐々に落ち着き、3日ほどでふだん通りの食事ができるようになる方がほとんどです。初めての経験で不安になる方も多いのですが、これは歯が正常に動いている証拠でもあります。
ワイヤー調整・マウスピース交換のとき
ワイヤー矯正では月に1回程度の調整があります。
ワイヤーを曲げて矯正力を付与すると、3〜4日でその力が消費されていきます。装置による痛みのピークもそれくらいの時期にやってくるため、残りの期間は比較的安静に過ごすことが可能です。厳密には10〜14日くらいまで痛みや違和感が残るものの、不快症状に悩まされるのはワイヤー調整後の数日間に限られます。
マウスピース矯正の場合は、新しいマウスピースに交換するたびに軽い痛みや違和感が出ることがあります。ただし、最初の装着時のように強く痛むことは少なく、「またちょっと来たな」くらいの感覚で済む方が大半です。マウスピース矯正は段階的に歯を動かしていくため、一度に加わる力が比較的小さく、痛みもマイルドになる傾向があります。
食事をするとき
矯正治療中は食事のときに痛みを感じることも多いです。
歯に対して常に圧力がかかっている状態であり、炎症反応が生じています。歯の根の周りに存在している「歯根膜」というセンサーも普段より敏感になっているのです。歯根膜は普段、食べ物の硬さなどを感知して噛む力を精密にコントロールしてくれていますが、矯正装置による圧力で外からの刺激に敏感となっており、少し噛むだけでも強い痛みが生じます。
特に硬いものや弾力のあるものを噛むときに痛みが強くなります。そのため、矯正治療中は食事の内容を工夫することが大切になってきます。
痛みはいつまで続くのか?

「この痛み、いつまで我慢すればいいんだろう……」
矯正中の歯の痛みの感じ方には個人差がありますが、ずっと続くわけではありません。痛みを感じやすいのは、調整日の翌日から3日後ほどです。1週間も経てば、痛みは気にならなくなります。
痛みのピークは「2日〜3日」となるのが一般的です。もちろん個人差はありますが、多くの方は1週間程度で少しずつ落ち着いてきます。万が一、2週間経っても食事が噛めないほどの痛みが継続する場合には、歯科医院に連絡を入れるようにしましょう。何か装置に問題がある可能性や、予想以上に強い力がかかっている可能性があります。
ワイヤー矯正の場合、調整後の数日間が最も痛みが強く、時間が経てば経つほど痛みも和らいでいきます。そのため、痛みが強いとしても一時的なものであり、常に痛いわけではありません。次の調整日までの間は、比較的快適に過ごせる期間が続きます。
装置が当たる痛みについて
歯が動く痛みとは別に、装置が口内に当たる痛みもあります。
ワイヤー矯正では、ブラケットやワイヤーの端が粘膜を刺激して痛みを生じさせることがあります。その状態が長く続くと口内炎ができて、痛みが助長されます。頬の内側が大きく腫れると、今度は誤って粘膜を噛んでしまう「誤咬」が起こりやすくなるため要注意です。
表側矯正の場合は装置が頬の粘膜に当たるため、頬に口内炎ができたりすることがあります。裏側矯正の場合は舌側に装置が付くため舌に口内炎ができたり話すときに当たる感じがあったりします。装置が当たる痛みは、歯が動く痛みとは異なり、装置に慣れるまで続くことがあります。ただし、多くの方は2〜3週間で慣れてきます。
痛みを和らげる7つの対処法

矯正中の痛みは慣れていくものですが、痛すぎて困っている方もいるでしょう。ここでは、痛みを和らげるための具体的な対処法を7つご紹介します。
柔らかいものを選んで食べる
痛みで噛むことが難しい場合は、柔らかい食材を選ぶようにしましょう。例えば、お豆腐やスクランブルエッグ、マッシュポテトやアボカドなどがおすすめです。焼いていない食パンやお粥、スープやヨーグルトなども、歯にかかる負担が少なくて済みます。
また、調理方法を工夫するのも効果的です。リンゴや大根などは、すり下ろすと食べやすくなること間違いなし。大きめの食材は、小さめの「一口サイズ」にカットしてみると良いでしょう。痛みが強い時期は、栄養バランスを保ちながらも食べやすさを優先することが大切です。
矯正用ワックスを使用する
ワイヤー矯正の装置が頬や舌にあたって痛い場合は、歯科医院でもらえる矯正用ワックスで保護すると痛みが和らぎます。ワイヤーが頬に刺さっているときに痛みはそのまま放置していると出血することもあります。
矯正用ワックスは適量をまるめ、痛みがでている箇所の装置にそっと押し付けるようにして使用します。ただし、食事や歯磨きで簡単に外れてしまうので、痛みがでている期間はワックスを付け替える必要があります。常に持ち歩いておくと、外出先でも対応できて安心です。
痛み止めを服用する
どうしても耐えられないほどの痛みが続く場合は、歯科医院に相談して痛み止めを処方してもらうのがおすすめです。
しかし、あまり何度も服用してしまうと「歯の動き」が遅くなってしまったり、正しい位置に動かなかったりする可能性もゼロではありません。必ず、担当の医師に相談した上で、容量を守って服用するようにしましょう。痛み止めは「どうしても必要なとき」の最終手段として考えておくと良いでしょう。
患部を冷やす
痛みが生じる場合は炎症が起きている証拠ですので、冷やすのが効果的です。保冷剤や氷などで、痛い部分を冷やしてください。ただし、冷やしすぎると矯正力が薄れてしまいますので、短時間にしてください。
お風呂上りや寝る前など、身体が温まると痛みがでやすいので、痛みで眠れないときに有効です。冷やす時間は10〜15分程度を目安にし、長時間冷やし続けないように注意しましょう。
お湯を口に含む
逆に、温かいお湯を口に含むことで痛みが和らぐこともあります。血行が良くなることで、炎症が早く治まる場合があるためです。ただし、熱すぎるお湯は避け、人肌程度の温度にしましょう。
冷やすのと温めるのは、どちらが効果的かは個人差があります。両方試してみて、自分に合った方法を見つけることが大切です。
口内炎予防の栄養を摂る
口内炎の影響で噛むことが難しい場合には、ビタミンB2やB6を豊富に含んだ食材を取り入れるのがポイント。
例えば、レバーや納豆、マグロやバナナなどには、口内炎を回復させるための栄養素が多く含まれているのでおすすめです。痛みが出る前に食べることで、口内炎予防にもつながります。矯正治療中は、普段以上に栄養バランスに気を配ることが大切です。
歯科医院で相談する
さまざまな処置を施しても痛みが軽減されない場合や、痛みに不安を覚える場合は、医師に相談するようにしましょう。自己判断せずワイヤーの調整やマウスピースの確認など、適切な処理を受けると痛みの原因もわかり安心です。
遠慮せずに相談することが、快適な矯正治療を続けるための鍵となります。担当医は、患者さんの痛みに寄り添い、最適な対処法を提案してくれます。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正、痛みの違いは?

「どっちの方が痛くないですか?」
矯正治療を検討されている方から、よくいただくご質問のひとつです。実際、どちらの治療法にも「歯が動く痛み」はありますが、その出方や感じ方には違いがあります。
ワイヤー矯正の痛みの特徴
ワイヤー矯正では、歯の表面に「ブラケット」という小さな装置を接着し、そこにワイヤーを通して歯を動かしていきます。このワイヤーの調整によって、部位によって局所的に大きな力がかかったり、あまりかからないところに分かれたりするようになっているため、初回装着時や毎月のワイヤー調整後といったタイミングで、特に歯ならびが悪い箇所を中心に「ズキッ」「ジンジン」とした痛みが出やすくなります。
また、ブラケットやワイヤーの端が粘膜に当たって口内炎ができたり、頬や唇の裏に違和感を覚えることもあります。ワイヤー矯正は、比較的強い力で歯を動かすことができるため、治療期間が短くなる傾向がありますが、その分痛みも強く感じることがあります。
マウスピース矯正の痛みの特徴
マウスピース矯正は、透明なプラスチック製のマウスピースを使って歯を少しずつ動かしていく矯正方法です。ワイヤー矯正と比較して、透明で目立たず、取り外しができるという特徴があります。
痛みに関しては、ややマイルドでジワジワした圧を感じることが多いです。マウスピースを変えるごとに痛みを感じることがあると言われていますが、ワイヤー矯正ほど局所的な強い痛みは少ない傾向にあります。段階的に少しずつ歯を動かしていくため、一度に加わる力が小さく、痛みも比較的穏やかです。
また、マウスピース矯正では装置が粘膜に当たる痛みはほとんどありません。ただし、歯茎に当たることがあったり、装着時に頬の粘膜を巻き込んでしまい痛みがあることもあります。全体的には、ワイヤー矯正よりも痛みが少ないと感じる方が多いようです。
むらせ歯科の矯正治療〜痛みに配慮した治療体制

むらせ歯科では、日本矯正歯科学会の有資格者が矯正治療を担当しています。専門教育を受け、しっかり臨床経験を積んだ医師による質の高い治療を提供しているため、痛みのコントロールにも配慮した治療が可能です。
透明で目立ちにくいマウスピース矯正「インビザライン」
むらせ歯科では、透明な装置を口にはめ、何度か新しいものに交換しながら徐々に歯を移動させるマウスピース型矯正装置「インビザライン」を導入しています。取り外し可能ですので、食べたい物がなんでも食べられ、食後の歯磨きや装置の洗浄も簡単に行うことができます。
ワイヤー矯正と比較して、装置が粘膜に当たる痛みが少ないというメリットがあります。ただし、装置を装着する判断は患者様に一任されるため、装置を付ける時間が短く、つけない期間があった場合は、治療期間が長くなってしまうというデメリットも存在します。1日20時間以上の装着が推奨されていますので、しっかりと装着時間を守ることが大切です。
患者さんとのコミュニケーションアプリ
むらせ歯科では、患者さんと医院とのコミュニケーションアプリを導入しています。どのくらい歯が動いているのかなどをスライドショーで確認できたり、マウスピースの交換時期を教えてくれる機能が付与されています。
このアプリにより、患者さんは治療の進捗を視覚的に確認でき、安心して治療を続けることができます。また、痛みや違和感があった際にも、アプリを通じて気軽に相談できる体制が整っています。患者さんと医院とのコミュニケーションを円滑にすることで、サービス精度の向上にもつながっています。
虫歯・歯周病予防の徹底
矯正治療中は「器具」をお口の中に入れますので、汚れが付きやすく、虫歯や歯周病になってしまう可能性が高まります。せっかく歯並びが綺麗になったのに、虫歯や歯周病になってしまい、お口の「審美性」「機能性」がおかしくなってしまったら本末転倒ですよね。
むらせ歯科では、矯正治療を行う前の初期処置(虫歯治療・歯周病治療・抜歯)、矯正治療中の虫歯予防・歯周病予防が適切に対処できます。矯正専門で行っている医院は、これらに対応していないところが多いため、虫歯や歯周病に関しては他の医院で処置する必要があり、患者様への負担が多くなることがあります。歯を綺麗に並べることだけではなく、虫歯や歯周病予防の処置をしっかり行えるかどうかも医院選びの判断基準として重要です。
顎関節症への配慮
不正咬合(悪い歯並び)の多くは顎関節にトラブルを持つ方が多いため、患者さんの希望がある場合は、むらせ歯科では矯正治療に入る前にスプリント療法(別途費用11万円(税込み))を行い、歯並びを綺麗に整えるだけではなく、顎関節症の改善も同時に行っていきます。
これにより、顎関節症に由来する不定愁訴(頭痛/肩こりなど)、顎の痛み/疲れ、歯ぎしり改善、顎の異音などの症状改善が期待できます。歯並びだけでなく、顎関節の健康にも配慮した総合的な治療を提供しています。
受診の目安〜こんなときは歯科医院へ
矯正治療中の痛みは、ある程度は避けられないものです。しかし、以下のような症状がある場合は、すぐに歯科医院に連絡を入れるようにしましょう。
- 2週間経っても食事が噛めないほどの痛みが継続する
- 眠れないほどの強い痛みがある
- 装置が外れたり、ワイヤーが飛び出したりしている
- 口内炎が大きく腫れて出血している
- 歯茎が大きく腫れている
- 発熱や頭痛を伴う痛みがある
これらの症状は、装置の不具合や感染症の可能性があります。自己判断せず、早めに歯科医院を受診することが大切です。
また、痛みが強くて日常生活に支障をきたしている場合も、遠慮せずに相談しましょう。担当医は、患者さんの痛みに寄り添い、適切な対処法を提案してくれます。我慢しすぎることなく、気になることがあればすぐに相談することが、快適な矯正治療を続けるための秘訣です。
まとめ〜痛みと上手に付き合いながら理想の歯並びへ
歯列矯正の痛みは、確かに避けられないものです。
しかし、痛みのピークは2〜3日程度で、1週間も経てば落ち着いてくることがほとんどです。また、柔らかい食事を選ぶ、矯正用ワックスを使用する、痛み止めを服用するなど、適切な対処法を知っていれば、痛みを和らげながら快適に治療を続けることができます。
現代の矯正治療は、技術の進歩により痛みのコントロールが格段に向上しています。特にマウスピース矯正は、ワイヤー矯正と比較して痛みが少ない傾向にあり、装置が粘膜に当たる痛みもほとんどありません。透明で目立ちにくく、取り外しも可能なため、日常生活への影響も最小限に抑えられます。
むらせ歯科では、日本矯正歯科学会の有資格者による専門的な治療、透明で目立ちにくいマウスピース矯正「インビザライン」の導入、虫歯・歯周病予防の徹底、顎関節症への配慮など、総合的なアプローチで患者さんのニーズに応える矯正歯科治療を提供しています。患者さんとのコミュニケーションアプリを活用し、治療の進捗を視覚的に確認できる体制も整えています。
「人前で笑うことにためらってしまう」「こどもの歯並びが気になる」といった方は、ぜひ一度むらせ歯科にご相談ください。痛みへの不安も含めて、丁寧にカウンセリングいたします。理想の歯並びを手に入れて、自信を持って笑える毎日を手に入れましょう。
矯正治療は、人生を変える大きな一歩です。痛みと上手に付き合いながら、一緒に理想の歯並びを目指していきましょう。東京歯科大学での経験を活かし、患者さん一人ひとりに寄り添った治療を提供してまいります。
2026年01月23日
歯列矯正の費用相場とは?治療方法別に解説
歯列矯正を検討する際、最も気になるのが「費用」ではないでしょうか。
美しい歯並びを手に入れたいと思っても、実際にどれくらいの費用がかかるのか分からないと不安ですよね。矯正治療は一般的に高額になりがちですが、治療方法や範囲によって大きく異なります。
近年では、歯列矯正の平均費用は約66.8万円とされています。ただし、前歯だけの「部分矯正」と奥歯まで含めた「全体矯正」では、約30万円もの差があることが分かっています。
表側矯正(ワイヤー矯正)の費用相場
表側矯正は、歯の表面に矯正装置を取り付ける最も一般的な方法です。
費用相場は30〜130万円程度となっています。この方法は歴史が長く、多くの症例に対応できるため、幅広い歯並びの問題に適用可能です。ただし、装置が目立つという点がデメリットとして挙げられます。
裏側(リンガル)矯正の費用相場
裏側矯正は、歯の裏側に装置を取り付ける方法です。
費用相場は40〜170万円程度と、表側矯正よりも高額になります。装置が外から見えないため、見た目を気にする方に人気がありますが、技術的に難易度が高いため、費用も高くなる傾向にあります。
マウスピース矯正の費用相場
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置を定期的に交換しながら歯並びを整える方法です。
費用相場は10〜100万円程度と幅があります。部分矯正であれば比較的安価に始められますが、全体矯正の場合は80〜100万円程度かかることもあります。取り外しができるため、食事や歯磨きがしやすいというメリットがあります。
出典:登戸グリーン歯科・矯正歯科「歯列矯正の費用と保険適用条件〜2025年最新ガイド」(2025年)より作成
子供の矯正治療の費用と特徴

子供の矯正治療は、大人の矯正とは異なる特徴があります。
一般的に子供の矯正治療は2段階で行われ、前半の治療を「I期治療」、後半の治療を「II期治療」といいます。可能であればI期治療で終了した方が、期間も短く済み、費用もそれほどかかりません。
I期治療の内容と費用
I期治療では、歯並びが悪くなる原因である「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全に着目します。
歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)を使用して改善していきます。この装置は歯を直接動かすのではなく、悪い歯並びになる原因をオリジナル装置やトレーニングで改善する方法です。
年齢に応じたアプローチがあり・・・0〜2歳では姿勢の訓練、3〜5歳ではインファントという取り外し可能なマウスピース型装置を1日2回10〜20分使用、6〜9歳ではマイオブレーストレーナーという装置と舌・口・呼吸の訓練を行います。
家庭でのトレーニング継続が重要で、専任スタッフの指導とオリジナルアプリケーションによる支援があります。
II期治療の内容と費用
I期治療が終わり、顎の補正が完了しても、歯並びそのものがでこぼこしていたり、歯が回転して生えていたり、上下の噛み合わせが良くなかったりすることがあります。
その場合に、仕上げのII期治療を行います。本格矯正には唇側マルチブラケット矯正(ワイヤー型)とマウスピース矯正(インビザライン)の2種類があります。矯正治療の費用は症状や治療内容によって異なりますが、約22〜110万円(税込)かかります。
保険適用される歯列矯正の条件
歯列矯正は基本的に「自由診療」となるため、保険適用外の治療です。
多くの方が審美的な目的で矯正を希望されるからです。しかし、例外的に保険が適用されるケースもあります。厚生労働省が定める特定の条件を満たす場合、健康保険の適用対象となります。
厚生労働省が定める疾患の場合
厚生労働省が定める特定の疾患がある場合、日常生活に支障をきたすため、保険適用の矯正治療を受けることができます。
2025年6月現在、該当する疾患は64種類あります。代表的なものとしては、唇顎口蓋裂、ダウン症候群、ゴールデンハー症候群などが挙げられます。これらの疾患は先天性のものが多く、口腔内の機能に影響を与えるため、健康上の理由から矯正治療が必要とされています。
永久歯萌出不全と顎変形症の場合
永久歯萌出不全とは、永久歯が適切な時期に生えてこない状態を指します。
前歯の永久歯が3本以上生えてこず、歯列不正や不正咬合が生じるおそれがある場合に保険が適用されます。また、顎変形症とは、上下の顎の位置や形状に異常があり、不正咬合を引き起こす疾患です。顎変形症の場合、噛み合わせの問題から食べ物をしっかり噛めなかったり、発音がしづらくなるなど、口腔機能に問題が生じます。
保険適用の条件としては、「顎口腔機能診断施設」として指定された医療機関で診断を受け、矯正治療に加えて顎の骨を切るなどの外科手術が必要と判断されることが条件です。
出典:登戸グリーン歯科・矯正歯科「歯列矯正の費用と保険適用条件〜2025年最新ガイド」(2025年)より作成
分割払いとデンタルローンの活用方法

歯列矯正の費用は高額になるため、一括払いが難しい方も多いでしょう。
そこで活用したいのが、分割払いやデンタルローンです。これらを利用することで、月々の負担を抑えながら矯正治療を受けることができます。
院内分割払いとは?
院内分割払いは、歯科医院が独自に提供する分割払いシステムです。
手数料や金利が比較的低く設定されていることが多く、審査も比較的緩やかです。ただし、分割回数に制限がある場合や、治療期間中に全額を支払う必要がある場合もあります。各歯科医院によって条件が異なるため、事前に確認することが大切です。
デンタルローンのメリット
デンタルローンは、患者が支払うべき治療費を信販会社が立替払いをして、その立替分を患者が分割で信販会社に返済していくものです。
信販会社が立替払いをした金額は、その患者のその立替払いをした年(歯科ローン契約が成立した時)の医療費控除の対象になります。院内分割よりも分割回数を多く設定できることが多く、月々の支払額を抑えられるメリットがあります。ただし、金利や手数料がかかるため、総支払額は一括払いよりも高くなります。
デンタルローンと医療費控除の関係
デンタルローンを利用した場合でも、医療費控除を受けることができます。
信販会社が立替払いをした金額は、その立替払いをした年の医療費控除の対象となります。ただし、歯科ローンに係る金利および手数料相当分は医療費控除の対象になりません。デンタルローンを利用した場合には、患者の手もとに歯科医の領収書がない場合があると考えられますが、この場合には、医療費控除を受けるときの支出を証明する書類として、歯科ローンの契約書や信販会社の領収書を保存してください。
出典:国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」(令和7年4月1日現在法令等)より作成
医療費控除で費用負担を軽減する方法
医療費控除とは、1年間に支払った医療費の合計が一定金額(原則10万円)を超えた場合、所得税が還付される制度です。
医療費が高額になった場合に、納めた税金の一部が返金されます。矯正治療費だけでなく、通院費用(交通費)も含まれます。
医療費控除の対象となる費用
医療費控除の対象となる費用には、診察代、検査代、矯正装置料、矯正器具の調整料・処置料、治療に必要な医薬品の費用、通院のための交通費(交通公共機関)が含まれます。
基本的に治療に必要となるものは全て医療費として含めることができます。お子様の治療を受ける場合は付き添い人の交通費まで対象になります。ただし、これは公共交通機関を使った場合に限られます。個人の自動車で通った際のガソリン代などは対象外となるので注意してください。
医療費控除額の計算方法
医療費控除額は、総医療費から保険金等で補填された額と10万円(総所得200万円以上の場合)を引いた金額です。
総所得200万円未満の場合は、総医療費から保険金等と総所得×5%を引いた金額となります。算出された「医療費控除額」に、自分の所得に応じた所得税率をかけると還付金の目安がわかります。
e-Taxで確定申告する方法
医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。
e-Taxを使えば、自宅からオンラインで申告でき、手間が少なくスピーディーです。必要書類は、源泉徴収票、医療費の領収書、医療費控除の明細書(国税庁サイトで作成可能)、マイナンバーカード(カード方式で申告する場合)です。e-Taxで申告する場合、領収書の提出は不要ですが、税務署から求められたときに提示できるよう、手元に整理して保管しておきましょう。
申告内容を税務署が確認後、指定口座に所得税の還付金が振り込まれます。
出典:矯正歯科ネット「【2026年度版】高額な矯正治療費を確定申告(医療費控除)e-Taxを活用」(2026年)より作成
矯正治療のメリットとデメリット

歯列矯正を始める前に、メリットとデメリットを理解しておくことが大切です。
治療には一定の期間と費用がかかりますので、十分に検討してから決断しましょう。
矯正治療のメリット
矯正治療の最大のメリットは、噛み合わせが整うことです。
正しい噛み合わせになると、食べ物をしっかり噛めるようになり、消化吸収も良くなります。また、歯並びが整うと歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病になりにくくなります。さらに、見た目の改善により、自信を持って笑えるようになるという心理的なメリットもあります。
矯正治療のデメリットと注意点
矯正治療のデメリットとしては、抜歯が必要な場合があることが挙げられます。
また、自費診療で高額になることや、歯根吸収が起こる可能性があることなどがあります。治療中は矯正装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことや、歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
まとめ:歯列矯正の費用を賢く抑える方法
歯列矯正の費用は、治療方法や範囲によって大きく異なります。
平均的には約66.8万円程度ですが、表側矯正で30〜130万円、裏側矯正で40〜170万円、マウスピース矯正で10〜100万円程度と幅があります。子供の矯正治療では、I期治療とII期治療の2段階で行われ、約22〜110万円(税込)かかります。
保険適用されるケースは限られていますが、厚生労働省が定める64種類の疾患や、永久歯萌出不全、顎変形症などの場合は保険が適用されます。
費用負担を軽減する方法として、分割払いやデンタルローンの活用、医療費控除の申請があります。デンタルローンを利用した場合でも医療費控除の対象となり、e-Taxで簡単に確定申告できます。医療費控除は医療費を支払った翌年から5年間申告可能なので、忘れずに申請しましょう。
矯正治療を検討している方は、まず歯科医院で相談し、自分に合った治療方法と支払い方法を選ぶことが大切です。美しい歯並びと健康な口腔環境を手に入れるために、計画的に治療を進めていきましょう。
むらせ歯科では、子供の矯正治療を2段階(I期治療とII期治療)で提供しています。歯並びを創造することと同時に、患者様の肉体的負担・経済的負担を抑えることを重視し、可能な限りI期治療で完了するよう治療を進めています。大人の歯が生えてきたタイミングでの相談を推奨しており、プロの目で診断することで今後の歯の動きを予測し、適切な治療開始時期を提案しています。
矯正治療に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
2026年01月21日
お子さんの前歯に隙間が目立ったり、ガタガタと重なり合って生えてきたりすると、親御さんとしては「このまま放っておいていいのだろうか」と心配になりますよね。
実は、子どもの歯並びは成長過程で一時的に隙間ができたり、乱れたりすることがあります。しかし、原因によっては早期の治療介入が必要なケースも存在します。
小児矯正では、歯並びが悪くなる「原因」そのものにアプローチすることで、将来的な歯並びの問題を予防し、お子さんの肉体的・経済的負担を最小限に抑えることができます。
この記事では、すきっ歯や前歯のガタガタといった歯並びの問題について、その原因から治療方法、装置の種類、治療開始時期まで、歯科医師の視点から詳しく解説していきます。
子どものすきっ歯・前歯のガタガタとは?

子どもの歯並びの問題は、大きく分けて「すきっ歯(空隙歯列)」と「前歯のガタガタ(叢生)」の2つのパターンがあります。
「すきっ歯」は、歯と歯の間に隙間がある状態で、正式には「空隙歯列(くうげきしれつ)」や「歯間離開歯(しかんりかいし)」といいます。特に前歯の中心に隙間がある状態は「正中離開(せいちゅうりかい)」と呼ばれます。
一方、「前歯のガタガタ」は歯が重なり合って生えている状態で、専門用語では「叢生(そうせい)」といいます。永久歯が生えるスペースが不足しているために起こります。
発育空隙について・・・一時的なすきっ歯は正常
乳歯が生え揃った後、顎の成長によって一時的に歯列に隙間ができることがあります。これを「発育空隙(はついくくうげき)」といい、「みにくいアヒルの子の時期」とも呼ばれます。
永久歯は乳歯よりも大きいため、永久歯がスムーズに生え変わるために必要なスペースなのです。永久歯が生え揃うことによって、少しずつ隙間は埋まっていきます。
乳歯の段階できれいに隙間なく並んでいると、永久歯になった時に歯が並ぶスペースがなくなり、歯並びが乱れてしまう可能性が高まります。
治療が必要なケースと経過観察で良いケース
すべてのすきっ歯や前歯のガタガタが治療を必要とするわけではありません。
乳歯のすきっ歯は永久歯がきれいに生えてくるための大切なスペースなので、基本的には経過観察となります。また、永久歯と乳歯が混ざって生える「混合歯列期(8〜10歳)」の上前歯は、ほとんどの場合が一時的にすきっ歯になりますが、犬歯が生えてくることで徐々に埋まっていきます。
しかし、真ん中の歯に3mm以上の隙間があるケースや、犬歯が生えた後も隙間が閉じないケース、必要以上に隙間が大きい場合などは、矯正治療が必要になることがあります。
すきっ歯・前歯のガタガタになる原因
子どもの歯並びが悪くなる原因は、先天的な要因と後天的な要因に分けられます。原因を特定することで、適切な治療方針を立てることができます。
口腔周囲筋の機能不全
歯並びが悪くなる最大の原因は「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全です。
普段何もしていない時に、舌が常に歯に触れている状態を「舌癖(ぜつへき)」といいます。つまり、常に歯に対して一定の力が与えられている状態です。こんな小さな力でも、長期間続くと歯並びは崩れてしまいます。
正しい舌の位置は、舌先が上の前歯のつけねの少し手前あたりに当たっている状態です。舌が低い位置にあると、上顎の成長を妨げ、歯並び悪化の原因となります。
口呼吸の影響
口で呼吸していると舌は低位になり、上顎の成長を妨げます。また、病原菌が喉の粘膜から直接取りこまれてしまうため、健康のためにも良いことではありません。
正常な呼吸は鼻で行いますが、口呼吸が癖になっている子どもが多くみられます。口呼吸になる原因の中でも、舌が正しい位置に置かれず下がってしまう「低位舌」が多く、これは口周りの筋力低下だけでなく、上顎前突(出っ歯)や空隙歯列(すきっ歯)などの不正咬合を引き起こす要因になります。
指しゃぶりなどの悪習癖
3歳以降も頻繁に指しゃぶりを続けていると、前歯の裏側に力が加えられるため、すきっ歯や出っ歯の原因になります。
指しゃぶりは、生後2〜4ヶ月頃から始まる行為で、最初は遊びとして始まり、幼児においては気持ちを落ち着かせるために行うことが多いです。3歳頃も頻繁に指しゃぶりをしている場合は、改善したほうがよいかもしれません。
他に気を紛らわせる遊びをしたり、指しゃぶりをしなかったことを褒めたりして、徐々に頻度を減らしていくことが大切です。
歯と顎の大きさのバランス
顎の大きさに対して歯が小さい場合は、すきっ歯になることがあります。逆に、歯のサイズが大きく顎が小さい場合には、叢生などガタガタの歯並びになってしまいます。
歯の大きさと顎の大きさがアンバランスなお子さまは、矯正治療が必要になる可能性が高まります。
先天的な要因
生まれつき歯の本数が少ない「先天性欠損」や、歯のサイズが小さい「矮小歯(わいしょうし)」の場合は、歯が並ぶ土台部分に余分なスペースができるため、すきっ歯になりやすくなります。
逆に、歯の本数が生まれつき多い「過剰歯」は、歯茎の中に埋まったまま生えてこない可能性が高く、その埋まった歯が邪魔をして永久歯が正常に生えず、歯間に隙間ができる場合があります。過剰歯は上顎前歯部分に多く、正中離開などになりやすい傾向があります。
上唇小帯の異常
上唇と歯茎をつなぐ上唇小帯(ヒダ)は、赤ちゃんの頃は太くて長いのですが、成長に伴って少しずつ小さくなっていきます。しかし、稀に正常に退縮をしない場合があり、永久歯が生える際に邪魔となってすきっ歯になる場合があります。
すきっ歯・前歯のガタガタを放置するリスク

子どもの歯並びの問題を放置すると、さまざまなデメリットが生じます。
虫歯・歯周病のリスク増加
歯と歯の間に隙間があったり、歯が重なり合っていたりすると、食べかすが詰まりやすくなり、適切なケアも難しくなることから虫歯や歯周病の発症リスクが高くなってしまいます。
治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いており、歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。ハミガキを適切に行ってお口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
発音障害
歯の間から空気が漏れるため、正しい発音ができない場合があります。特に「さ行」や「た行」を発音する際に歯と歯の隙間から空気が漏れてしまい、言葉がうまく伝えることができず、滑舌が悪く聞こえることがあります。
見た目のコンプレックス
すきっ歯は、国によって「美人」や「幸運の歯」と言われることもありますが、日本では「まぬけ顔」「貧乏に見える」など悪い印象をもたれるため、コンプレックスに感じる人が多くみられます。
年を重ねるごとに症状が悪化することが多く、歯の隙間が目立つため、コンプレックスに感じる方も多くいらっしゃいます。特に前歯のすきっ歯の場合は、口を開けるとすぐに目につき、人と会話することに消極的になる可能性があります。
小児矯正の治療開始時期
「いつから矯正を始めればいいのか」は、親御さんからよく受ける質問です。
お子さんのすきっ歯の治療開始時期については、上の前歯が生え変わる7歳頃が一般的ですが、成長に伴う一時的なすきっ歯(発育空隙)であれば、永久歯が生え揃うにつれて自然と隙間が埋まることも多く、治療が必要ないこともあります。
年齢別のアプローチ
むらせ歯科では、年齢に応じた段階的なアプローチを行っています。
0歳〜2歳・・・歯並びはお口だけの問題ではなく、座り方、姿勢、抱っこの仕方が原因で悪くなってしまうことがあります。親御さんと一緒にお子様の正しい「姿勢」を獲得する訓練を行います。
3歳〜5歳・・・インファントという取り外しできるマウスピース型の装置を1日2回10分〜20分利用することで、顎の成長を促し、歯並びが悪くなる原因を除去していきます。
6歳〜9歳・・・マイオブレーストレーナーという取り外し式の装置と舌・口・呼吸の訓練を行います。歯並びが悪くなる口呼吸、舌の突き出し、指しゃぶりなどを改善します。
早期相談の重要性
特にお子様の歯並びの場合、親御さんが「矯正した方がいいかな?」と思った時は、適切な治療開始時期を逃してしまっていることが多々あります。
大人の歯(前歯)が生えてきたら、治療するしないにかかわらず一度ご相談にお越しください。プロの目で診断することで、今後どのように歯が動いていくのかを予測できますので、治療が必要になるか否か、治療開始時期はいつ頃がいいかなどをお話しさせて頂きます。
小児矯正の治療方法と装置
小児矯正は、一般的に2段階で行われます。前半の治療を「I期治療」、後半の治療を「II期治療」といいます。
I期治療・・・原因にアプローチする予防矯正
I期治療では、歯を直接動かすのではなく、悪い歯並びになってしまう「原因」をオリジナル装置やトレーニングで改善していく治療法になります。
むらせ歯科では「歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)」という方法を採用しています。これは、歯並びが悪くなる原因である「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全に着目した治療法です。
マイオブレーストレーナーという取り外し式の装置と舌・口・呼吸の訓練を組み合わせることで、歯並びが悪くなる口呼吸、舌の突き出し、指しゃぶりなどを改善します。
ご自宅でのトレーニングの重要性
トレーニングというと「難しそう」「続けられるかな……」と不安に思われるかもしれません。トレーニング自体は難しくはありませんし、痛みも一切伴いません。しかし、「継続」が大切になります。
このトレーニングを行わないと効果が半減してしまうため、お子様に継続してもらうため、親御さんの協力が必要となります。
トレーニング方法は、専門のトレーニングを受けた専任スタッフがお伝えします。また、ご自宅でも精度の高いトレーニングを実施してもらうため、ご自宅のパソコンや携帯で閲覧できるオリジナルアプリケーションをダウンロードし、アニメのキャラクターと一緒に楽しくトレーニングができる環境を整えています。
II期治療・・・歯並びの仕上げ
I期治療が終わり、顎(アゴ)の補正が完了しても、歯並びそのものがでこぼこしていたり、歯が回転して生えていたり、上下の噛み合わせが良くなかったりすることがあります。その場合に、仕上げのII期治療を行います。
本格矯正には、「唇側マルチブラケット矯正(ワイヤー型)」と「マウスピース矯正(インビザライン)」の2種類があります。
唇側マルチブラケット矯正は、歯にワイヤー型の装置を取り付けて行う治療です。すべての歯に矯正装置を装着し、理想的な歯並び、かみ合わせを目指す治療です。
マウスピース矯正(インビザライン)は、透明なマウスピース型の矯正装置を定期的に取り換えながら、歯並びを整える治療です。マウスピース矯正のみ矯正中のホワイトニングが可能です。
可能な限りI期治療で完了を目指す方針
矯正治療は一定の期間と費用が掛かりますので、可能であればI期治療で終了した方が好ましいです。期間も短く済み、費用もそれほど掛かりませんので。
むらせ歯科は、「歯並びを創造」することを第一に考えていますが、それと同じレベルで「患者様の肉体的負担・経済的負担を抑える」ことも重要視しています。そのため、可能な限りI期治療で完了するよう治療を進め、どうしてもII期治療まで必要な場合は、しっかりとお子さんと親御さんにご説明させて頂き治療を進めていきます。
矯正治療の費用と流れ

矯正治療の費用は症状や治療内容によって異なりますが、約22〜110万円(税込)ほどかかります。自費診療となるため、健康保険の対象外です。
治療の流れ
①矯正相談・・・歯並びの不安や疑問点などについて、お伺いし、最適な矯正治療プラン、時期、金額などについて、詳しくご説明します。当院に通院されている患者様については、相談料はかかりません。
②資料取り・・・現在のお口の状態や身体の状態などを詳しく把握するための検査を行わせていただきます。検査では、お口やお顔の写真の撮影、レントゲン撮影、お口の内のスキャンを行います。
③診断・・・資料取りを行っていただいてから2週間後、再度ご来院頂いて資料の診断結果についてご説明させていただきます。この診断では、患者様の現在の歯並びやお口の状態について詳しくご説明させていただき、治療の流れや費用などについてご案内させていただきます。資料取り・診断料は33,000円(税込)です。
④治療開始・・・診断の結果を踏まえて、治療に移ります。永久歯が生えそろう前のお子様の治療の場合、予防矯正から始める場合があります。予防矯正の料金は440,000円、再診料は3,300円/月です。
⑤メンテナンス・保定治療・・・きれいに並んだ歯並びを維持するための治療です。歯並びというのは、永久的なものではありません。歯は、加齢変化で徐々にでこぼこがでてくるものなのです。きれいに並んだ歯をずっときれいに維持するためには保定装置を用いたメインテナンスが必要になります。
医療費控除の活用
矯正治療は費用が高くなりがちですが、確定申告の医療費控除を活用することで所得税還付を受けて結果的に費用負担を軽減できます。控除対象には治療費だけでなく通院にかかる交通費も含まれ、家族分の費用も合算できます。
還付金は実際に支払った医療費と所得税率に応じて計算されます。申告は医療費を支払った翌年から5年間可能で、分割払いで支払った場合も実際に支払った年度ごとに控除できます。
矯正治療のメリットとリスク
矯正治療のメリット
矯正治療には多くのメリットがあります。
まず、噛み合わせが整うことで、食べ物をしっかりと噛めるようになり、消化吸収が良くなります。また、歯磨きがしやすくなることで、虫歯や歯周病になりにくくなります。
見た目の改善も大きなメリットです。歯並びが整うことで、笑顔に自信が持てるようになり、お子さんの心理的な負担も軽減されます。
矯正治療に伴うリスクと副作用
矯正治療にはいくつかのリスクや副作用も存在します。
矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間〜1、2週間で慣れてきます。
歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。また、矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことや、歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
まとめ
お子さんのすきっ歯や前歯のガタガタは、原因を正しく特定し、適切な時期に適切な治療を行うことで、将来的な歯並びの問題を予防できます。
小児矯正では、歯を直接動かすのではなく、歯並びが悪くなる「原因」そのものにアプローチすることで、お子さんの肉体的・経済的負担を最小限に抑えることができます。
むらせ歯科では、「歯並びを創造」することと「患者様の負担を抑える」ことを同等に重視し、可能な限りI期治療で完了するよう治療を進めています。
大人の歯(前歯)が生えてきたら、治療するしないにかかわらず、まずは一度ご相談ください。プロの目で診断することで、お子さんの歯並びの将来を予測し、最適な治療開始時期をご提案させていただきます。
お子さんの笑顔と健康な歯並びのために、早めのご相談をお待ちしております。
2026年01月20日
お子さんの歯並びが気になり始めたとき、「矯正治療はいつから始めればいいの?」と悩まれる親御さんは少なくありません。小児矯正には「第一期治療(Ⅰ期治療)」と「第二期治療(Ⅱ期治療)」という2つの段階があり、それぞれ目的や治療内容が大きく異なります。
この記事では、小児矯正の第一期・第二期の違いについて、治療内容や通院期間、始めるタイミングまで詳しく解説します。
お子さんに最適な治療を選ぶために、まずは基本的な知識を整理していきましょう。
小児矯正の「第一期・第二期」とは?基本的な考え方

小児矯正は、お子さんの成長段階に合わせて2つの治療期間に分けられます。
第一期治療(Ⅰ期治療)は、乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」に行う治療です。一方、第二期治療(Ⅱ期治療)は、永久歯がすべて生え揃った後に行う本格的な矯正治療を指します。
この2段階に分ける理由は、子どもの顎の成長を最大限に活用するためです。
第一期治療では、顎の骨格を整えることで、永久歯がきれいに並ぶための「土台作り」を行います。第二期治療では、その土台の上に生え揃った永久歯を細かく調整し、美しい歯並びと正しい噛み合わせを完成させます。
すべてのお子さんが両方の治療を必要とするわけではありません。歯並びの状態によっては、第一期治療だけで完了するケースもあれば、第二期治療から始めるケースもあります。
第一期治療と第二期治療の主な違い
第一期治療と第二期治療の違いを簡単にまとめると、以下のようになります。
- 第一期治療・・・顎の成長を利用した「骨格の調整」が中心
- 第二期治療・・・永久歯を直接動かす「歯列の調整」が中心
第一期治療は、成長期だからこそできる治療法です。顎の骨がまだ柔らかく成長している時期に介入することで、将来的な抜歯のリスクを減らしたり、治療期間を短縮できたりする可能性があります。
一方、第二期治療は成人矯正と同じ方法で行われます。ワイヤー矯正やマウスピース矯正を使い、一本一本の歯を理想的な位置へと移動させていきます。
第一期治療(Ⅰ期治療)の内容と特徴
第一期治療は、永久歯が生え始める6歳から11歳頃に行われることが多い治療です。
この時期は「混合歯列期」と呼ばれ、乳歯と永久歯が混在しています。顎の成長が活発な時期でもあるため、矯正治療を始めるタイミングとして非常に重要です。
第一期治療の主な目的
第一期治療の最大の目的は、「歯並びが悪くなる原因」を取り除くことです。
歯並びが悪くなる主な原因は、「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全にあります。具体的には、口呼吸や舌癖(舌で歯を押す癖)、指しゃぶりなどの習慣が、歯並びに悪影響を与えます。
例えば、普段何もしていないときに舌が常に歯に触れている状態を「舌癖」といいます。このような小さな力でも、長期間続くと歯並びは崩れてしまいます。
第一期治療では、これらの原因を「歯列矯正用咬合誘導装置」という方法で改善していきます。歯を直接動かすのではなく、悪い歯並びになってしまう「原因」をオリジナル装置やトレーニングで改善していく治療法です。
年齢別の治療アプローチ
第一期治療は、お子さんの年齢によって取り組み方が異なります。
0歳~2歳では、歯並びはお口だけの問題ではなく、座り方や姿勢、抱っこの仕方が原因で悪くなることがあります。この時期は、親御さんと一緒にお子さんの正しい「姿勢」を獲得する訓練を行います。
3歳~5歳では、インファントという取り外しできるマウスピース型の装置を使用します。1日2回、10分~20分利用することで、顎の成長を促し、歯並びが悪くなる原因を除去していきます。
6歳~9歳では、歯列矯正用咬合誘導装置という取り外し式の装置と、舌・口・呼吸の訓練を行います。歯並びが悪くなる口呼吸、舌の突き出し、指しゃぶりなどを改善します。
第一期治療の期間と通院頻度
第一期治療の治療期間は、症状によって異なりますが、おおむね1年半から4年程度です。
通院頻度は、原則として1~2か月に1度の割合です。通院時には、口腔内のチェックや装置の調整を行います。
第一期治療が完了した後は、永久歯がきれいに並んでいればそれ以上の治療は不要です。ただし、顔の成長や歯の生え変わりを観察し続ける必要があります。永久歯の並びが理想的でない場合には、調整として第二期治療に進むことがあります。
第二期治療(Ⅱ期治療)の内容と特徴

第二期治療は、永久歯がすべて生え揃った後に行う本格的な矯正治療です。
一般的に、第二大臼歯が生える小学校高学年から中学生くらいの時期に開始します。この治療は、成人矯正と同じ方法で行われます。
第二期治療の主な目的
第二期治療の目的は、永久歯の歯並びや噛み合わせをしっかりと作り上げることです。
第一期治療が完了しても、歯並びが悪かったり、歯が回転して生えていたり、上下の歯がしっかりと噛み合っていなかったりする場合に、第二期治療を行います。
第一期治療を受けていた場合、第二期治療では歯の移動距離が短くなったり、治療期間が短縮されたりする可能性があります。第一期治療で顎の骨格を整えておくことで、第二期治療の負担を減らすことができるのです。
第二期治療で使用する装置
第二期治療では、大きく分けて2種類の治療法があります。
ワイヤー矯正(唇側マルチブラケット矯正)は、金属のワイヤーやブラケットの装置を歯の表面に固定する方法です。歯にブラケットという器具を取り付け、そこにワイヤーを通して歯列矯正を行います。
歯の裏側にブラケットをつける裏側矯正とは異なり、発音が不明瞭になったり、しゃべりにくくなったりするデメリットを防げます。ただし、ワイヤーが表に出るため、見た目が気になる場合もあります。
マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、透明なマウスピース型の矯正装置を定期的に取り換えながら、歯並びを整える治療です。取り外しが可能なため、食事や歯磨きがしやすく、見た目も目立ちません。
ただし、装着時間を守らなければ効果が得られないため、お子さん本人と保護者の協力が不可欠です。
第二期治療の期間と通院頻度
第二期治療の治療期間は、症状によって異なりますが、おおむね1年から3年程度です。
通院頻度は、第一期治療と同様に1~2か月に1度の割合です。状況によっては、口腔内のチェックや器具の調整を行います。
矯正器具の装着期間が終了した後は、保定期間を設けます。保定装置(リテーナー)を用いて、歯が元の状態に戻ろうとする「後戻り」を防ぎます。保定期間は一般的に3年程度必要です。
第一期治療だけで終わる場合と第二期治療が必要な場合
すべてのお子さんが第一期治療と第二期治療の両方を必要とするわけではありません。
歯並びの状態によっては、第一期治療だけで完了することが可能です。第一期治療だけで終わる場合、治療期間が短くなり、費用も少なくて済みます。
第一期治療だけで完了するケース
第一期治療で顎の成長を適切にコントロールし、口腔周囲筋の機能を改善できた場合、永久歯が自然にきれいに並ぶことがあります。
特に、軽度の歯並びの乱れや、顎の成長バランスの問題が早期に改善された場合は、第一期治療だけで治療が完了する可能性が高くなります。
ただし、第一期治療終了後も、顔の成長や歯の生え変わりを観察し続ける必要があります。定期的な検診を受けることで、問題が生じた場合に早期に対応できます。
第二期治療が必要になるケース
第一期治療が完了しても、以下のような状態が見られる場合は、第二期治療が必要になります。
- 永久歯が斜めに生えている
- 歯が回転して生えている
- 上下の歯がしっかりと噛み合っていない
- 歯並びに凸凹が残っている
第一期治療で顎の骨格を整えていても、個々の歯の位置が理想的でない場合は、第二期治療で細かく調整する必要があります。
また、第一期治療を受けずに、第二期治療から矯正を始めるケースもあります。永久歯が生え揃った後に歯並びの問題が明らかになった場合や、第一期治療を必要としない症例の場合です。
小児矯正を始めるタイミングと相談の重要性

小児矯正を始める最適なタイミングは、お子さんの歯並びの状態によって異なります。
一般的には、永久歯が生え始める6歳から7歳頃に一度、矯正歯科医に相談することが推奨されています。この時期に専門医の診断を受けることで、早期治療が必要かどうかを判断できます。
早期治療が望ましいケース
歯並びの状態によっては、早期治療が望ましい場合があります。
受け口(反対咬合)は、早期治療が特に重要です。受け口は歯そのものではなく、顎の骨に問題が起きているため、下顎の成長を終えた状態では治療が困難になります。6歳から8歳までに受診するのが望ましいとされています。
出っ歯(上顎前突)も、早期治療が効果的です。上顎の成長は10歳でほぼストップするため、成長が止まる前に矯正歯科で受診することが推奨されます。成長を終えてから治療を開始した場合、非抜歯での治療が難しくなる可能性があります。
これらのケースでは、顎の発育が正常な状態になるよう早めに導くことが大切です。
矯正相談の流れ
矯正治療を検討する際は、まず矯正相談から始めます。
矯正相談では、歯並びの不安や疑問点について詳しくお伺いし、最適な矯正治療プラン、時期、金額などについて説明します。治療をするしないに関わらず、まずは一度相談にお越しいただくことをおすすめします。
相談から治療へ進む方には、現在のお口の状態や身体の状態などを詳しく把握するための検査(資料取り)を行います。検査では、お口やお顔の写真の撮影、レントゲン撮影、お口の内のスキャンを行います。
資料取りを行ってから2週間後、再度ご来院いただいて資料の診断結果についてご説明します。この診断では、患者さんの現在の歯並びやお口の状態について詳しくご説明し、治療の流れや費用などについてご案内します。
親御さんが判断するのは難しい
親御さんが矯正をする時期を判断するのは難しいと思います。
少しでも歯並びが気になったときには、治療をするしないに関わらず、まずは一度ご相談にお越しください。プロの目で診断することで、その後、歯がどのように移動していくのかを予測し、治療が必要なのか、治療開始期間などについて丁寧に説明させていただきます。
先天的な欠損歯や埋伏歯など、検査してみないとわからない症例もあります。早めに相談することで、将来の治療の選択肢を広げ、お子さんの健康や生活の質を守る第一歩となります。
小児矯正の費用と保定治療について
小児矯正の費用は、歯並びの症状や治療内容によって異なります。
一般的に、矯正治療は自費診療となるため、費用は約40万円から100万円程度が基本になります。第一期治療と第二期治療を合わせると、成人矯正より高額になる場合もあります。
治療段階別の費用目安
予防矯正(第一期治療)の料金は、約44万円程度です。再診料は月額3,300円です。装置を紛失・破損した場合には、1個ごとに別途9,000円が必要になります。
本格矯正(第二期治療)の料金は、治療方法によって異なります。
唇側マルチブラケット矯正(ワイヤー型)の場合、料金は77万円から88万円程度です。再診料は月額5,500円です。予防矯正から移行した場合は、33万円程度となります。
マウスピース矯正(インビザライン)の場合、料金は88万円から110万円程度です。再診料は月額5,500円です。治療期間短縮装置を使用する場合は、別途5万5,000円が必要です。
保定治療の重要性
矯正治療後は、保定装置を用いたメンテナンスが必要です。
きれいに並んだ歯並びを維持するための治療が、保定治療です。歯並びは永久的なものではなく、加齢によって徐々にでこぼこが出てくるものです。
保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや噛み合わせの「後戻り」が生じる可能性があります。アンチエイジングの意味でも、きれいに並んだ歯をずっときれいに維持するためには保定装置を用いたメンテナンスが必要になります。
保定治療の再診料は月額3,300円です。リテーナーを紛失・破損した場合の作り替えは、6,600円です。
小児矯正のメリットとリスク

小児矯正には多くのメリットがありますが、同時にリスクや注意点も存在します。
治療を始める前に、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが大切です。
小児矯正のメリット
小児矯正の主なメリットは、以下の通りです。
見た目の改善によって、お子さんの自信や学校生活への適応に良い影響を与えることがあります。多感な年頃になると見た目に対する意識が高まり、特に歯並びが気になるようになります。早期に治療を開始すれば、心理的な負担を減らすことにもつながります。
虫歯や歯周病のリスク低減も重要なメリットです。歯並びが整うことで、歯磨きがしやすくなり、食べ物が溜まりにくくなります。
噛み合わせの改善によって、咀嚼効率が向上します。正しい噛み合わせは、消化機能の向上や顎関節への負担軽減にもつながります。
口腔機能の改善も期待できます。口呼吸の改善や発音の改善など、歯並び以外の健康面にも良い影響があります。
将来の治療負担の軽減も大きなメリットです。第一期治療で顎の骨格を整えておくことで、第二期治療が短期間・軽度で済むケースがあります。また、永久歯の抜歯を避けられる可能性も高まります。
小児矯正のリスクと注意点
小児矯正には、以下のようなリスクや注意点があります。
治療期間が長くなることがあります。乳歯期から始めると、数年単位での通院が必要になります。
再治療の可能性も考慮する必要があります。顎や歯の成長は個人差が大きいため、中高生以降に本格矯正(第二期治療)が必要になることもあります。
お子さんの協力が不可欠です。取り外し式の装置は、装着時間を守らなければ効果が得られません。お子さん本人と保護者の協力がないと、治療が進まないこともあります。
費用面の負担も考慮が必要です。第一期治療・第二期治療を合わせると、成人矯正より高額になる場合があります。
矯正装置による違和感や痛みが生じることがあります。装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間から1、2週間で慣れてきます。
虫歯や歯周病のリスク増加にも注意が必要です。治療中は矯正装置が歯の表面に付いているため食物が溜まりやすく、また歯が磨きにくくなります。適切なハミガキを行い、お口の中を常に清潔に保つことが大切です。
まとめ:お子さんに最適な治療を選ぶために
小児矯正の第一期治療と第二期治療は、それぞれ異なる目的と役割を持っています。
第一期治療は、顎の成長を利用した「骨格の調整」が中心で、歯並びが悪くなる原因を取り除くことを目指します。第二期治療は、永久歯を直接動かす「歯列の調整」が中心で、美しい歯並びと正しい噛み合わせを完成させます。
すべてのお子さんが両方の治療を必要とするわけではなく、歯並びの状態によっては第一期治療だけで完了することもあります。一方で、第二期治療から始めるケースもあります。
小児矯正を始める最適なタイミングは、お子さんの歯並びの状態によって異なります。少しでも歯並びが気になったときには、まずは一度矯正歯科医に相談することをおすすめします。
専門医の診断を受けることで、お子さんに最適な治療方法や開始時期を見極めることができます。早めの相談が、将来の治療の選択肢を広げ、お子さんの健康や生活の質を守る第一歩となります。
お子さんの健やかな成長と美しい笑顔のために、適切な時期に適切な治療を選択していきましょう。
むらせ歯科茂原院では、お子さんの矯正治療について無料相談を実施しています。
お子さんの歯並びが気になる方、矯正治療について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。経験豊富な専門医が、お子さん一人ひとりに最適な治療プランをご提案いたします。
患者さんの身体的・経済的負担を軽減するため、可能な限り第一期治療で矯正を完了させることを目指していますが、必要に応じて第二期治療も実施します。治療開始前には、お子さんと親御さんに十分な説明を行い、納得いただいた上で治療を進めています。
お子さんの未来の笑顔のために、今できることから始めてみませんか?
2026年01月19日
子どもの歯並び、気になりますか?
「うちの子、歯並びが悪いかも・・・」
そんな不安を抱えている親御さんは少なくありません。小児矯正は、お子さんの将来の健康や笑顔のために検討すべき大切な治療です。しかし、多くの方が最初に直面するのが「費用」の問題でしょう。矯正治療は自費診療であり、決して安価ではありません。だからこそ、事前にしっかりと費用の相場や内訳を理解しておくことが重要です。
小児矯正には「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」という2段階のアプローチがあり、使用する装置も床矯正やプレオルソ、マウスピース矯正、ワイヤー矯正など多岐にわたります。それぞれの装置には特徴があり、費用も異なるため、お子さんの状態や治療目標に合わせた選択が求められます。
この記事では、小児矯正の費用相場を装置別に詳しく解説し、治療の流れや費用の内訳、さらには費用を抑えるための制度まで網羅的にご紹介します。
小児矯正の基本〜Ⅰ期治療とⅡ期治療の違い
小児矯正は、成長期の子どもに特化した治療法です。
大きく分けて「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2段階で進められます。この2つの治療は、目的も使用する装置も異なるため、まずはその違いを理解しておきましょう。
Ⅰ期治療とは?〜成長を利用した土台づくり
Ⅰ期治療は、乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」に行う治療です。
この時期の子どもは顎の骨がまだ柔らかく、成長段階にあります。そのため、顎の成長を促したり、歯が正しく並ぶためのスペースを確保したりすることが可能です。Ⅰ期治療の最大の目的は、「歯並びが悪くなる原因」を根本から改善することにあります。
具体的には、口呼吸や舌癖といった「口腔周囲筋の機能不全」を改善します。これらの悪習癖は、歯並びを悪化させる主要な原因です。歯列矯正用咬合誘導装置やプレオルソといった取り外し可能な装置を使用し、舌や唇、頬の筋肉を正しく機能させることで、自然な歯並びへと誘導していきます。
Ⅰ期治療の対象年齢は、一般的に5歳から9歳頃です。この時期に適切な治療を行うことで、将来的に本格的な矯正治療が不要になったり、治療期間を短縮できたりする可能性が高まります。
Ⅱ期治療とは?〜永久歯を正確に整える
Ⅱ期治療は、永久歯がすべて生え揃った後に行う治療です。
通常12歳頃から開始され、成人の矯正治療と同様の方法で歯並びを整えます。Ⅰ期治療で改善しきれなかった歯の位置や回転、噛み合わせの問題を、より精密に調整していくのがⅡ期治療の役割です。
使用する装置は、金属のワイヤーとブラケットを使った「唇側マルチブラケット矯正」や、透明なマウスピースを使った「マウスピース矯正(インビザラインなど)」が一般的です。これらの装置により、一本一本の歯を理想的な位置へと移動させ、美しい歯並びと正しい噛み合わせを実現します。
Ⅰ期治療を受けた子どもの場合、顎の成長や歯列の土台がすでに整っているため、Ⅱ期治療の期間が短縮されたり、抜歯の必要性が減ったりするメリットがあります。一方、Ⅰ期治療を受けずにⅡ期治療から始める場合もあり、その場合は治療期間が長くなる傾向があります。
装置別の費用相場〜床矯正・プレオルソ・マウスピース矯正

小児矯正の費用は、使用する装置によって大きく異なります。
ここでは、代表的な装置である床矯正、プレオルソ、マウスピース矯正、そしてワイヤー矯正の費用相場を詳しく見ていきましょう。
床矯正の費用相場
床矯正は、顎の幅を物理的に広げる治療法です。
取り外し可能な装置に「拡大ネジ」が組み込まれており、定期的にネジを回すことで歯列弓を徐々に拡大していきます。永久歯が並ぶスペースを確保することが主な目的で、叢生(歯の重なり)や出っ歯の改善に効果的です。
床矯正の費用相場は、一般的に40万円から60万円程度です。ただし、上下両方の装置が必要な場合や、治療期間が長引く場合は、さらに費用がかかることもあります。また、装置の紛失や破損時には、1個あたり9,000円から55,000円程度の再製作費用が発生します。
床矯正は6歳から12歳頃の混合歯列期に適しており、治療期間は1年から2年程度が一般的です。装着時間は原則として1日14時間以上が推奨されており、学校での装着も必要になる場合があります。
プレオルソの費用相場
プレオルソは、筋機能訓練に特化したマウスピース型装置です。
歯を直接動かすのではなく、口呼吸や舌癖といった悪習癖を改善することで、自然な歯並びへと誘導します。柔らかいシリコン素材でできており、装着時の違和感が少ないのが特徴です。
プレオルソの費用相場は、35万円から70万円程度です。装着時間が就寝時と日中1時間程度と短いため、学校生活への影響が少なく、子どもの負担も軽減されます。治療期間は半年から1年半程度が一般的で、5歳から8歳頃の低年齢層に特に効果的です。
プレオルソは、口周りの筋肉を正しく機能させることで、歯並びの根本的な原因を改善します。そのため、治療後の後戻りが起こりにくいというメリットがあります。ただし、重度の歯列不正には適応できない場合もあるため、歯科医師との十分な相談が必要です。
マウスピース矯正(インビザライン等)の費用相場
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを段階的に交換しながら歯を動かす治療法です。
見た目が目立ちにくく、取り外しも可能なため、食事や歯磨きがしやすいという利点があります。特に「インビザライン」は、世界中で広く使用されている代表的なマウスピース矯正システムです。
マウスピース矯正の費用相場は、部分矯正で50万円から70万円、全体矯正で70万円から120万円程度です。治療範囲や歯並びの状態によって費用が大きく変動します。また、治療期間短縮装置を使用する場合は、別途55,000円程度の費用が発生することもあります。
マウスピース矯正は、永久歯に生え変わった後のⅡ期治療で主に使用されます。治療期間は症例によって異なりますが、1年から2年半程度が一般的です。定期的な通院は6週間から8週間に1回程度で、ワイヤー矯正よりも来院頻度が少ないのも特徴です。
ワイヤー矯正の費用相場
ワイヤー矯正は、最も伝統的で確実性の高い矯正方法です。
金属のブラケットとワイヤーを歯の表面に固定し、ワイヤーの弾性を利用して歯を動かします。幅広い症例に対応でき、重度の歯列不正にも効果的です。
ワイヤー矯正の費用相場は、77万円から88万円程度です。予防矯正(Ⅰ期治療)から移行した場合は、33万円程度に抑えられることもあります。治療期間は1年半から3年程度が一般的で、月に1回程度の調整が必要です。調整料は1回あたり5,500円程度が相場です。
ワイヤー矯正のデメリットは、装置が目立つことや、食事や歯磨きがしにくくなることです。また、金属アレルギーのリスクもあります。しかし、確実に歯を動かせるため、複雑な症例でも対応可能という大きなメリットがあります。
小児矯正の費用内訳〜何にいくらかかる?

矯正治療の総額は、一つの項目だけで決まるわけではありません。
治療前の検査から治療後の保定まで、さまざまな段階で費用が発生します。ここでは、小児矯正にかかる費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
初診・相談料
矯正治療を検討する際、まず最初に発生するのが初診・相談料です。
多くの歯科医院では、初回の相談を無料で行っているところもありますが、有料の場合は3,000円から5,000円程度が相場です。この段階では、お子さんの歯並びの状態を確認し、治療の必要性や適切な開始時期、おおよその費用などについて説明を受けます。
初診相談は、治療を決定する前の重要なステップです。複数の歯科医院で相談を受け、治療方針や費用を比較検討することをおすすめします。信頼できる歯科医師を見つけることが、成功する矯正治療の第一歩となります。
検査・診断料
治療を開始する前には、詳細な検査が必要です。
検査には、レントゲン撮影、CT撮影、口腔内スキャン、顔や口の写真撮影などが含まれます。これらのデータをもとに、歯科医師が正確な診断を行い、最適な治療計画を立てます。検査・診断料の相場は、3万円から5万円程度です。
精密な検査は、治療の成功に不可欠です。特に、CTやデジタル口腔内スキャナー「iTero」などの最新設備を導入している医院では、より正確な診断が可能になります。検査結果は、通常2週間程度で出揃い、その後に詳細な治療計画の説明を受けることになります。
装置料・治療費
矯正治療の中で最も大きな割合を占めるのが、装置料と治療費です。
これは、使用する矯正装置の種類や治療の複雑さによって大きく変動します。前述の通り、床矯正で40万円から60万円、プレオルソで35万円から70万円、マウスピース矯正で50万円から120万円、ワイヤー矯正で77万円から88万円程度が相場です。
装置料には、マウスピースやブラケット、ワイヤーなどの材料費のほか、装置の調整や交換にかかる技術料も含まれます。また、治療中に装置を紛失したり破損したりした場合は、別途再製作費用が発生します。装置の管理には十分注意しましょう。
調整料(再診料)
矯正治療中は、定期的な通院が必要です。
通院のたびに発生するのが調整料(再診料)で、1回あたり3,000円から6,000円程度が相場です。ワイヤー矯正の場合は月に1回、マウスピース矯正の場合は6週間から8週間に1回程度の通院が必要です。治療期間が1年から2年と長期にわたるため、調整料の総額も無視できない金額になります。
調整料は、歯の動きを確認し、装置を調整するための重要な費用です。通院をサボると治療期間が延びたり、効果が十分に得られなかったりするため、計画的な通院が大切です。
保定装置料・観察料
矯正治療が完了した後も、油断は禁物です。
歯は元の位置に戻ろうとする性質があるため、「保定」という期間が必要になります。保定装置(リテーナー)を装着し、定期的に歯科医院で経過観察を受けます。保定装置の製作費用は6,000円から1万円程度、定期観察料は1回あたり3,000円程度が相場です。
保定期間は一般的に1年から2年程度ですが、場合によってはそれ以上の期間が必要なこともあります。せっかく整えた歯並びを維持するために、保定装置の使用は非常に重要です。指示通りに装置を使用しないと、「後戻り」が生じる可能性があるため、注意が必要です。
費用を抑える方法〜医療費控除と支払い方法

矯正治療は高額な費用がかかるため、経済的な負担を軽減する方法を知っておくことが重要です。
ここでは、医療費控除の活用方法や、無理のない支払い方法についてご紹介します。
医療費控除を活用する
矯正治療は、条件を満たせば医療費控除の対象になります。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告によって所得控除を受けられる制度です。一般的には、年間の医療費が10万円を超えた場合に適用されます。小児矯正の場合、「容ぼうを美化するための治療」ではなく、「年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合」に適用されるため、多くのケースで医療費控除の対象となります。
医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。治療費の領収書や診断書を保管しておき、翌年の確定申告時に提出します。e-Taxを利用すれば、オンラインで簡単に申告できます。医療費控除によって、実質的な治療費の負担を軽減できるため、必ず活用しましょう。
デンタルローンを利用する
矯正治療の費用を一括で支払うのが難しい場合、デンタルローンの利用を検討しましょう。
デンタルローンは、歯科治療専用の分割払いシステムです。多くの歯科医院で取り扱っており、月々の支払額を抑えながら治療を受けることができます。金利は金融機関によって異なりますが、一般的なクレジットカードの分割払いよりも低金利であることが多いです。
デンタルローンを利用する際は、返済期間や月々の支払額をしっかりと確認し、無理のない計画を立てることが大切です。また、医療費控除はローンを利用した場合でも適用されるため、併用することでさらに負担を軽減できます。
分割払いや振込を選択する
歯科医院によっては、独自の分割払いプランを用意しているところもあります。
デンタルローンを利用しなくても、医院と直接相談して支払い計画を立てることができる場合があります。また、振込による支払いを選択することで、クレジットカードの手数料を節約できることもあります。支払い方法については、初診時や契約時に歯科医院のスタッフに相談してみましょう。
経済的な理由で矯正治療を諦める前に、まずは歯科医院に相談することをおすすめします。多くの医院が、患者さんの負担を軽減するために柔軟な対応をしてくれます。
小児矯正のメリットとリスク〜知っておくべきこと

矯正治療には多くのメリットがありますが、同時にリスクも存在します。
治療を開始する前に、これらをしっかりと理解しておくことが重要です。
小児矯正のメリット
小児矯正の最大のメリットは、見た目の改善です。
美しい歯並びは、お子さんの自信や笑顔につながります。また、歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが低減します。さらに、正しい噛み合わせは、食べ物をしっかりと噛むことができるようになり、消化機能の向上にもつながります。
成長期に矯正治療を行うことで、顎の成長を適切に誘導できるのも大きなメリットです。Ⅰ期治療で土台を整えることで、将来的に本格的な矯正治療が不要になったり、治療期間が短縮されたりする可能性があります。また、口呼吸や舌癖といった悪習癖を改善することで、全身の健康にも良い影響を与えます。
小児矯正のリスクと副作用
矯正治療にはリスクも伴います。
装置を装着した直後は、違和感や痛みを感じることがあります。また、治療期間が予想よりも長引く可能性もあります。矯正装置が歯の表面に付いていると、食べ物が溜まりやすく、歯磨きが難しくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。適切な口腔ケアが不可欠です。
ごくまれに、歯根吸収(歯の根が短くなる現象)が起こることがあります。また、金属製の装置を使用する場合は、金属アレルギーのリスクも考慮する必要があります。治療中に顎関節の痛みや音が鳴るなどの症状が出ることもあります。
これらのリスクを最小限に抑えるためには、信頼できる歯科医師のもとで治療を受け、指示に従って適切なケアを行うことが重要です。
まとめ〜お子さんの未来のために最適な選択を
小児矯正の費用は、装置や治療内容によって大きく異なります。
床矯正で40万円から60万円、プレオルソで35万円から70万円、マウスピース矯正で50万円から120万円、ワイヤー矯正で77万円から88万円程度が相場です。これに加えて、検査・診断料、調整料、保定装置料などが発生するため、総額では100万円を超えることも珍しくありません。
しかし、医療費控除やデンタルローンを活用することで、経済的な負担を軽減することが可能です。また、Ⅰ期治療で適切に土台を整えることで、将来的な治療費を抑えられる可能性もあります。
矯正治療は、お子さんの将来の健康と笑顔への投資です。費用だけでなく、治療の質や歯科医師の経験、通院のしやすさなども考慮して、最適な選択をしてください。まずは信頼できる歯科医院で相談を受け、お子さんに合った治療計画を立てることから始めましょう。
お子さんの輝く笑顔のために、今できる最善の選択をしませんか?
むらせ歯科茂原院では、お子さん一人ひとりの状態に合わせた小児矯正治療を提供しています。Ⅰ期治療からⅡ期治療まで、一貫してサポートし、患者さんの身体的・経済的負担を軽減するために最善を尽くしています。歯並びが気になる方は、まずはお気軽にご相談ください。
2026年01月18日
お子さんの歯並びを見て、「将来、歯列矯正が必要になるかもしれない」と不安を感じている親御さんは少なくありません。
特に最近では、「顎を広げる小児矯正」や「拡大床(床矯正)」という治療法を耳にする機会が増えています。
しかし、本当にこの治療は必要なのでしょうか?
実は、拡大床を使った治療にはメリットもあればデメリットもあり、すべての症例に適応できるわけではありません。適切な判断をするためには、治療の仕組みや効果、そしてリスクをしっかり理解することが大切です。
この記事では、東京歯科大学で学んだ知識と臨床経験をもとに、顎を広げる小児矯正の実態を詳しく解説します。拡大床のメリット・デメリット、適応症例、注意点まで、親御さんが知っておくべき情報を網羅的にお伝えします。
小児矯正で顎を広げる理由とは
小児矯正で顎を広げる最大の理由は、永久歯がきれいに並ぶためのスペースを確保することです。
近年、子供の歯自体が大きくなる傾向にあり、永久歯に生え変わった際に従来よりも広い顎が必要になりました。上顎の成長は10歳から12歳程度で決まってしまうため、このタイミングで治療を行うことが重要なのです。
顎が小さいまま放置すると、永久歯が並びきらずに歯列がガタガタになったり、前歯が押し出されて出っ歯になったりする可能性があります。こうした問題を未然に防ぐために、成長期のお子さんに対して顎を広げる治療が提案されるのです。
顎を広げる拡大床(拡大装置)の仕組み
拡大床とは、上顎を広げるための取り外し可能な装置です。
入れ歯のような形状をしており、中央に拡大ねじが埋め込まれています。このねじを定期的に回すことで、少しずつ歯列を頬側に広げていく仕組みです。
拡大床には「急速拡大法」と「緩徐拡大法」の2種類があります。急速拡大法は2週間から2カ月程度の短期間で上顎の横幅を広げる方法で、成長期の子供の骨の成長速度を利用します。一方、緩徐拡大法は1年から2年程度の時間をかけて徐々に歯列を広げていくため、痛みの負担が少なく、頻繁に用いられる方法です。
お子さんの上顎には、成長期でまだ完全にくっついていない2つの骨があります。拡大床はこの骨が完全にくっつく前に力を加えて拡大させる仕組みで、1日に0.2mm程度の長さを2回広げていきます。1日に0.4mm程度広げていく習慣を2週間から3週間程度続け、拡大しきったら新しい骨ができて安定するまで3カ月程度装着したまま過ごします。
顎を広げると顔が大きくなるのか
「顎を広げると顔が大きくなるのでは?」という心配をされる親御さんがいます。
しかし、拡大床による治療は歯の生える位置を調整するだけなので、顔の輪郭が変わることはありません。顎の骨格そのものを大きくするわけではなく、歯列を頬側に傾斜移動させる治療だからです。
ただし、無理に力を加えて過度に拡大すると、歯を骨の外に追いやるような結果になる可能性があります。その場合、歯茎が下がって歯根が露出したり、歯の神経が死んでしまったりするリスクがあるため、適切な診断と治療計画が不可欠です。
拡大床を使った小児矯正のメリット

拡大床を使った小児矯正には、いくつかの大きなメリットがあります。
特に成長期のお子さんにとっては、将来的な歯並びの問題を予防できる可能性が高まります。
抜歯を避けられる可能性が高い
拡大床を使用する最大のメリットは、健康な歯を抜かずに矯正治療ができる点です。
歯列矯正では、歯を並べるスペースを確保するために抜歯をすることがあります。しかし、拡大床で歯列を広げることで、抜歯をせずにスペースを作り出せるのです。
抜歯は痛みを伴いますし、精神的な負担も大きいため、これを避けられることは大きな利点といえます。特に永久歯が生えそろう前の混合歯列期よりも前に治療を開始できれば、先に永久歯が生えそろうスペースを確保できるため、今後矯正治療で抜歯する必要がなくなります。
骨格と歯列を同時に整えられる
小児矯正のような幼い時期に顎を広げると、骨格と歯列のアンバランスを同時に改善できます。
上顎の成長は10歳から12歳ごろで決まってしまうため、小児矯正を始めるなら早く始めた方がよいでしょう。成長期の子供の顎の成長を利用して矯正を行うため、永久歯が生えそろってから行う成人矯正に比べて負担が少なく、理想的な歯並びへ導くことが可能です。
鼻呼吸がしやすくなる
小児矯正で顎を広げると、鼻呼吸がしやすくなる効果も期待できます。
上顎を広げることにより、空気の通り道である鼻腔も広がり、鼻呼吸がしやすくなるからです。口呼吸は病原菌が喉の粘膜から直接取り込まれてしまうため、健康のためにも良いことではありません。鼻呼吸への改善は、お子さんの全身の健康にも良い影響を与えます。
取り外しができるためストレスが少ない
拡大床には取り外しができるタイプがあり、食事や歯磨きのときに外すことができます。
矯正治療中、装置に食べ物が挟まったり、装置と接している部分の歯磨きが疎かになったりするのを不快に感じる方は多いです。自分で取り外しができるものであれば、食事や歯磨きをするときのストレスを減らすことができます。矯正治療は長期にわたるので、少しでもストレスを減らせることはメリットです。
矯正していることに気づかれにくい
拡大床は歯の裏側に装着するため、装着していても目立たず周りの人に気づかれにくいです。
また、取り外しができる拡大床の装着時間は基本的に1日8時間以上で、装着時間を守れば外出中は外すこともできます。治療中の精神的な負担を軽減できる点はメリットといえるでしょう。
拡大床を使った小児矯正のデメリットと注意点

拡大床には多くのメリットがある一方で、デメリットや注意すべき点も存在します。
治療を検討する際には、これらのリスクもしっかり理解しておく必要があります。
すべての症例に適応できるわけではない
拡大床を使用する目的は歯列を頬側に広げることです。
そのため、拡大床だけでは歯並びの細かい乱れまで改善することはできません。拡大床だけで完結できる症例もありますが、ほとんどの場合ではワイヤー矯正やマウスピース矯正と併用する必要があります。
実は、顎の骨格自体は床矯正の装置では広がりません。歯は歯槽骨という骨に埋まっており、この歯槽骨は上顎や下顎のベースとなる骨に歯列に沿ってU字型にのっかっています。歯が内側に向かって倒れているような場合、歯槽骨も歯と一緒に倒れ込んでいる場合が多く、床矯正装置を用いることで倒れ込んでいる歯とともに歯列を矯正することは可能です。しかし、床矯正はあごの骨格自体を広げる治療法ではないため、過度に行えば歯を骨の外に追いやるような結果にもなりかねません。
装着時間を守る必要がある
取り外し可能な拡大床を使用する場合、装着時間を自分で管理する必要があります。
装着時間が短いと、期待していた治療効果が得られないので注意が必要です。基本的には1日8時間以上の装着が求められ、場合によっては14時間以上、18時間以上の装着が必要になることもあります。装着時間は連続している必要はありませんが、1回あたりの装着時間は30分以上が理想的です。
紛失・破損のリスクがある
取り外し可能な拡大床の場合、適切に取り扱わないと紛失・破損する可能性があります。
紛失した場合は作り直しが必要になり、追加で費用がかかったり、治療期間が延びたりする可能性があります。そのため、拡大床を取り外したら専用のケースに保管するなどして、適切に管理する必要があるのです。自己管理に自信がない方は、取り外しのできない固定式の装置のほうがよい場合もあるでしょう。
痛みや違和感を伴うことがある
拡大床を装着して慣れるまでは、違和感があることもデメリットです。
顎を拡大するのは無理やり力を加えて行うため、多少の痛みが伴います。ただし、1週間から2週間で違和感にも慣れてくるはずです。拡大床を装着していると、発音に影響が出ることもあります。
歯茎が下がったり歯の神経が死ぬリスク
床矯正では歯列を横に広げるだけでなく、前方に広げることもあります。
この場合、前歯がどんどん前に出てきますので、歯並びはきれいになったものの、出っ歯になったり口元が突出したりという不具合が起こることも危惧されます。このようなことが起きてしまうと、せっかくお金と時間をかけて床矯正治療を行っても、むしろ悪い結果を招いてしまうということになります。
過度に拡大すれば歯を骨の外に追いやるような結果になり、歯茎が下がって歯根が露出したり、歯の神経が死んでしまったりするおそれがあります。
拡大床が適応する症例と適さない症例
拡大床を用いた矯正が適応される可能性があるのは、特定の歯並びのケースです。
すべてのお子さんに適しているわけではないため、適切な診断が重要になります。
拡大床が適応する症例
拡大床が適応する可能性がある歯並びには、以下のようなものがあります。
八重歯やデコボコの歯並び(叢生)は、顎が狭く歯が並ぶスペースが十分確保できず、歯が重なって生えてきてしまったことが原因であることが多いです。そのため拡大床によって歯列を拡大するのが適切と判断されることがあります。
出っ歯(上顎前突)も歯が並ぶスペースが十分にないことが原因になっていることがあります。並び切らなかった前歯が押し出され、出っ歯になってしまったケースです。このような場合、前から4番目あたりの歯を抜歯し、突出している部分を後退する矯正を行うこともありますが、拡大床で歯列を広げる矯正を行うこともあります。
受け口(反対咬合)は下顎が上顎よりも大きいことが原因で起こっていることがあります。この場合、上顎を床矯正で拡大して改善をはかることがあります。
深い噛み合わせ(過蓋咬合)は、奥歯の噛み合わせに原因があることが多いです。そのためジャンピングプレートなどを用い、奥歯の噛み合わせを改善することがあります。
拡大床が適さない症例
一方で、拡大床が適さない症例もあります。
下顎も上顎も普通の大きさの場合、上顎を過度に広げてしまうと下顎の骨格とアンバランスになり、噛み合わせなどにも悪い影響がおよぶおそれがあります。このような場合、歯並びがデコボコしている原因が顎にあるのではなく歯にありますので、歯を何本か少しずつ削ったり、抜歯をしたりして解決するのがよいと考えられます。
また、急速拡大装置を使っても広がるのは上顎だけであり、下顎を広げることはできないというのは歯科矯正学の基本です。下顎が普通で上顎が小さい場合や下顎が大きく上顎が普通の場合などは、上顎を下顎に合わせて広げることが可能かもしれません。しかし、すべてのケースで拡大床が最適な選択肢とは限りません。
拡大床以外の小児矯正の選択肢
拡大床以外にも、小児矯正にはさまざまな治療法があります。
お子さんの年齢や症状に応じて、最適な方法を選択することが大切です。
マイオブレース(歯列矯正用咬合誘導装置)
マイオブレースは、歯を直接動かすのではなく、悪い歯並びになってしまう「原因」をオリジナル装置やトレーニングで改善していく治療法です。
歯並びが悪くなる原因は「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全です。例えば、普段何もしていない時に舌が常に歯に触れている状態を「舌癖」といい、常に歯に対して一定の力が与えられている状態になります。こんな小さな力でも歯並びは崩れてしまいます。その他、口呼吸や逆嚥下も歯並びが悪くなる原因となります。
マイオブレースは、年齢に応じたアプローチがあります。0歳から2歳では姿勢の訓練、3歳から5歳ではインファントという取り外し可能なマウスピース型装置を1日2回10分から20分使用、6歳から9歳ではマイオブレーストレーナーという装置と舌・口・呼吸の訓練を行います。家庭でのトレーニング継続が重要で、専任スタッフの指導とオリジナルアプリケーションによる支援があります。
ワイヤー矯正(唇側マルチブラケット矯正)
ワイヤー矯正は、歯にワイヤー型の装置を取り付けて行う治療です。
拡大床で顎の補正が完了しても、歯並びそのものがでこぼこしていたり、歯が回転して生えていたり、上下の噛み合わせが良くなかったりすることがあります。その場合に、仕上げの治療として行われます。
マウスピース矯正(インビザライン)
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の矯正装置を定期的に取り換えながら、歯並びを整える治療です。
目立ちにくく、取り外しができるため、お子さんの負担が少ない治療法です。ただし、すべての症例に適応できるわけではありません。
小児矯正を始めるべき時期と相談のタイミング
小児矯正を始めるべき時期は、お子さんの成長段階によって異なります。
適切なタイミングを逃さないためには、早めの相談が重要です。
大人の歯が生えてきたら相談を
特にお子さんの歯並びの場合、親御さんが「矯正した方がいいかな?」と思った時は、適切な治療開始時期を逃してしまっていることが多々あります。
大人の歯(前歯)が生えてきたら、治療するしないにかかわらず一度ご相談にお越しください。プロの目で診断することで、今後どのように歯が動いていくのかを予測できますので、治療が必要になるか否か、治療開始時期はいつ頃がいいかなどをお話しさせていただきます。
上顎の成長は10歳から12歳で決まる
上顎の成長は10歳から12歳程度で決まり、顎を大きくするならこのタイミングで治療をするしかありません。
こういった理由から幼い時期から小児矯正を通じて顎を広げる必要があるのです。永久歯が生えそろう前(混合歯列期)よりも前に治療を開始できれば、先に永久歯が生えそろうスペースを確保できるので、今後矯正治療で抜歯する必要がありません。
小児矯正の費用と治療期間の目安

小児矯正の費用と治療期間は、症状や治療内容によって大きく異なります。
事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
I期治療とII期治療の費用
一般的に子供の矯正治療は2段階で行われます。
前半の治療のことをI期治療といい、後半の治療のことをII期治療といいます。矯正治療は一定の期間と費用が掛かりますので、可能であればI期治療で終了した方が好ましいです。期間も短く済み、費用もそれほど掛かりませんので。
個人の症状や治療内容などによって異なりますが、約22万円から110万円(税込)ほどかかります(自費診療)。予防矯正(I期治療)の料金は44万円、本格矯正(II期治療)の料金は77万円から110万円程度です。
治療期間の目安
拡大床を使った治療期間は、急速拡大法で2週間から2カ月程度、緩徐拡大法で1年から2年程度です。
その後、新しい骨ができて安定するまで3カ月程度装着したまま過ごします。I期治療全体では1年から3年程度、II期治療では2年から4年程度の期間がかかることが一般的です。
小児矯正のリスクと副作用
小児矯正には、いくつかのリスクや副作用があります。
治療を始める前に、これらをしっかり理解しておくことが重要です。
装置装着後の違和感や痛み
矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間から1週間、2週間で慣れてきます。
治療期間の延長の可能性
歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
むし歯や歯周病のリスク
治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜まりやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。
したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
歯根吸収や歯肉退縮
歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
治療後の「後戻り」
動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや噛み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
きれいに並んだ歯並びを維持するための治療が必要です。歯並びというのは、永久的なものではありません。歯は、加齢変化で徐々にでこぼこがでてくるものなのです。アンチエイジングの意味でも、きれいに並んだ歯をずっときれいに維持するためには保定装置を用いたメインテナンスが必要になります。
まとめ〜顎を広げる小児矯正は慎重な判断が必要
顎を広げる小児矯正は、適切なタイミングと症例に対して行えば、お子さんの将来的な歯並びを大きく改善できる治療法です。
拡大床を使った治療には、抜歯を避けられる、骨格と歯列を同時に整えられる、鼻呼吸がしやすくなるといったメリットがあります。一方で、すべての症例に適応できるわけではなく、装着時間の管理や紛失・破損のリスク、痛みや違和感といったデメリットも存在します。
重要なのは、お子さんの顎の大きさや歯並びの状態を正確に診断し、本当に拡大床が必要かどうかを見極めることです。下顎も上顎も普通の大きさの場合、上顎を過度に広げてしまうと下顎の骨格とアンバランスになり、噛み合わせなどにも悪い影響がおよぶおそれがあります。
大人の歯が生えてきたら、治療するしないにかかわらず一度専門医にご相談ください。プロの目で診断することで、今後どのように歯が動いていくのかを予測でき、治療が必要になるか否か、治療開始時期はいつ頃がいいかなどを判断できます。
お子さんの歯並びは、将来の健康や自信にも大きく影響します。適切な情報をもとに、慎重に治療方針を決めていきましょう。
お子さんの歯並びが気になる方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。早めの診断が、お子さんの将来の笑顔を守ります。