歯列矯正による顎痛を改善する5つの専門的アプローチ
2025年10月21日
歯列矯正中に発生する顎痛の原因とメカニズム
歯列矯正治療を始めると、多くの患者さんが顎の痛みや違和感を経験します。この症状は決して珍しいものではありません。
矯正治療では、歯に持続的な力をかけて少しずつ移動させていきます。その過程で、顎関節や周囲の筋肉に負担がかかることで痛みが生じるのです。特に治療開始直後や装置の調整後に痛みを感じる方が多いようです。

顎痛が発生する主な原因としては、以下の5つが挙げられます。
- ・咬合バランスの変化:矯正治療によって歯の位置が変わることで、噛み合わせのバランスが一時的に崩れます。これにより顎関節に過度な負担がかかり、痛みを引き起こすことがあります。
- ・顎関節への負担増加:特に奥歯の位置が変わると、顎関節に新たな負担がかかります。
- ・筋肉の緊張:矯正装置への違和感から無意識に顎に力が入り、筋肉が緊張状態になることがあります。
- ・食いしばりの増加:ストレスや装置の違和感から、無意識に歯を食いしばる習慣が強まることがあります。
- ・顎関節症の顕在化:もともと潜在していた顎関節症が、矯正治療をきっかけに症状として現れることもあります。
私が東京歯科大学で学んでいた頃、顎関節症と矯正治療の関連性について研究する機会がありました。多くの症例を見てきた経験から言えることは、適切な対処法を知っておくことで、痛みを最小限に抑えながら治療を続けることが可能だということです。
顎痛を改善する5つの専門的アプローチ
矯正治療中の顎痛は、適切なアプローチで改善できます。ここでは、臨床経験に基づいた効果的な5つの方法をご紹介します。
これらの方法は、むらせ歯科茂原院のような専門的な矯正治療を提供する歯科医院でも取り入れられている手法です。顎関節への負担を軽減しながら、効果的に歯並びを改善していくためのアプローチとして非常に重要なものです。
1. スプリント療法による顎関節の安定化
スプリント療法は、顎関節症の症状改善に非常に効果的なアプローチです。これは、上下の歯の間に装着する特殊なマウスピースを使用する治療法です。
このスプリントは、噛み合わせを理想的な位置に導き、顎関節への負担を均等に分散させる効果があります。特に矯正治療前や治療中に顎関節症の症状がある場合に有効です。

むらせ歯科茂原院では、矯正治療前にスプリント療法(11万円税込)を行うことで、顎関節症の改善と同時に歯並びの矯正を進めるアプローチを採用しています。これにより、顎関節症に由来する頭痛や肩こり、顎の痛みや疲れ、歯ぎしり、顎の異音などの症状が改善されることが期待できます。
私自身、多くの患者さんにスプリント療法を提案してきましたが、特に夜間の歯ぎしりが激しい方や、顎関節に違和感を感じている方に効果的でした。
2. マウスピース型矯正装置の活用
透明なマウスピース型矯正装置は、従来のワイヤー矯正に比べて顎への負担が少ないという大きなメリットがあります。取り外しが可能で口内の違和感が少なく、食事や歯磨きも通常通り行えます。
特に顎関節症の症状がある患者さんには、このマウスピース型矯正装置が適していることが多いです。装置の厚みが緩衝材の役割を果たし、顎関節への負担を軽減する効果があるためです。
むらせ歯科茂原院では、マウスピース矯正に患者さんと医院間のコミュニケーションアプリを導入しており、治療の進捗確認や装置の交換時期の通知などが可能です。これにより、患者さんは安心して治療を続けることができます。
ただし、歯の移動量が大きい場合(抜歯が必要な場合)はマウスピース矯正だけでは難しいこともあるため、表側矯正や裏側矯正と併用することもあります。装置の装着時間を守らないと治療期間が延びる可能性もありますので、医師の指示に従うことが重要です。
3. 咬合調整による噛み合わせの最適化
矯正治療中に顎痛が生じる原因の一つに、噛み合わせのバランスの崩れがあります。咬合調整は、歯の表面を少し削ることで噛み合わせを調整し、顎への負担を均等に分散させる方法です。
特に矯正装置の調整後に噛み合わせが高くなっている部分があると、そこに力が集中して顎関節に負担がかかります。咬合調整を行うことで、この問題を解決できることが多いのです。

私の臨床経験では、矯正治療中に定期的な咬合チェックと調整を行うことで、顎痛の訴えが大幅に減少することが確認できています。特に奥歯の噛み合わせのバランスが重要です。
どうですか?あなたも矯正治療中に顎の痛みを感じたことはありませんか?
4. 顎関節運動訓練の実施
顎関節の運動訓練は、顎の筋肉のバランスを整え、関節の動きをスムーズにするのに役立ちます。簡単に自宅でできるエクササイズとして、以下のようなものがあります。
- ・開口訓練:ゆっくりと口を開け、数秒間保持した後、ゆっくりと閉じる動作を10回程度繰り返します。
- ・側方運動:下顎を左右にゆっくりと動かし、各方向で数秒間保持します。
- ・前方運動:下顎を前に突き出し、数秒間保持した後、元の位置に戻します。
- ・マッサージ:頬骨の下から顎関節にかけての筋肉を、指で円を描くようにやさしくマッサージします。
これらの運動は、1日2〜3回、各5〜10回程度行うことで効果が期待できます。ただし、痛みを感じる場合は無理をせず、歯科医師に相談することが大切です。
顎関節運動訓練は、矯正治療中だけでなく、治療後の安定期にも継続することで、顎関節の健康維持に役立ちます。
矯正装置の種類による顎痛リスクの違い
矯正装置の種類によって、顎痛のリスクや対処法は異なります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った矯正方法を選ぶことが重要です。
矯正装置は大きく分けて「固定式」と「取り外し式」があります。それぞれに利点と注意点があり、顎関節への影響も異なります。
ワイヤー矯正(固定式)の特徴と対策
ワイヤー矯正は、歯に直接ブラケットを接着し、ワイヤーを通して歯を移動させる方法です。強い矯正力が得られるため、複雑な症例にも対応できますが、顎への負担が大きくなる可能性があります。

ワイヤー矯正中に顎痛を軽減するためには、以下の対策が効果的です。
- ・調整直後の柔らかい食事:ワイヤーの調整後は特に痛みを感じやすいため、柔らかい食事に切り替えることで顎への負担を減らせます。
- ・温湿布の活用:顎関節部分に温湿布を当てることで、筋肉の緊張をほぐし、痛みを和らげる効果があります。
- ・就寝時のナイトガード:特に歯ぎしりがある方は、就寝時にナイトガードを使用することで、顎関節への負担を軽減できます。
私が臨床で見てきた多くの症例では、ワイヤー矯正中の顎痛は一時的なものが多く、体が装置に慣れるにつれて徐々に軽減していくことがほとんどです。しかし、痛みが長期間続く場合は、早めに歯科医師に相談することをお勧めします。
マウスピース矯正の利点と注意点
マウスピース矯正は、透明な装置を使用するため目立ちにくく、取り外しも可能なので日常生活への影響が少ないという利点があります。また、顎関節への急激な負担が少ないため、顎痛のリスクも比較的低いとされています。
しかし、マウスピース矯正中に顎痛が生じるケースもあります。その主な原因と対策は以下の通りです。
- ・奥歯の離開:マウスピース矯正の特性として、治療中に臼歯(奥歯)が歯茎方向に沈んでいくような移動が発生することがあります。これにより上下の奥歯のかみ合わせが離れる方向に移動し、一時的に奥歯が噛めなくなることがあります。この場合、マウスピースを装着している時は痛みが軽減することが特徴です。
- ・食いしばりの誘発:マウスピースの素材には弾性があり、適度な厚みもあることから噛みやすく、食いしばりを誘発してしまうことがあります。特に上下歯列に顎間ゴムを使用している場合は、口が閉じる方向に誘導され、噛みしめ動作を行いやすくなります。
マウスピース矯正中に顎痛が生じた場合は、装置の装着状況や痛みのパターンを詳しく歯科医師に伝えることが重要です。症状に応じて、装置のデザイン変更や治療計画の調整が必要になることもあります。
矯正治療は一人ひとりの症状に合わせたオーダーメイドの治療です。どのような矯正装置を選ぶにしても、定期的な通院と歯科医師とのコミュニケーションが重要になります。
顎痛を予防するための日常生活での工夫
矯正治療中の顎痛を予防・軽減するためには、日常生活での工夫も非常に重要です。ここでは、自宅でできる効果的な対策をご紹介します。
これらの方法は、私が長年の臨床経験から患者さんにお勧めしているものです。継続することで、顎関節の健康維持に役立ちます。
食事と咀嚼の工夫
食事の内容や食べ方を工夫することで、顎への負担を大幅に軽減できます。
- ・バランスの良い咀嚼:左右均等に噛むことを意識しましょう。片側だけで噛む習慣があると、顎関節に偏った負担がかかります。
- ・小さく切り分ける:食べ物を小さく切り分けることで、大きく口を開ける必要がなくなり、顎への負担が減ります。
- ・硬い食べ物を避ける:特に矯正装置の調整直後は、硬い食べ物を避け、柔らかいものを選ぶようにしましょう。
- ・ゆっくり噛む:急いで食べると顎に余計な力が入ります。ゆっくりと時間をかけて食事をすることで、顎への負担を減らせます。
私のある患者さんは、矯正治療中に顎の痛みを訴えていましたが、食事の際に意識して左右均等に噛むようにしたところ、数週間で症状が改善したケースがありました。小さな習慣の変化が大きな効果をもたらすことがあります。
ストレス管理と顎関節の関係
ストレスと顎関節症には密接な関係があります。ストレスを感じると、無意識のうちに歯を食いしばったり、顎に力が入ったりすることがあります。
ストレス管理のための効果的な方法としては、以下のようなものがあります。
- ・深呼吸や瞑想:1日数分でも深呼吸や瞑想を行うことで、全身の筋肉の緊張をほぐす効果があります。
- ・適度な運動:ウォーキングやヨガなどの適度な運動は、ストレスホルモンの分泌を抑え、全身の血行を促進します。
- ・十分な睡眠:質の良い睡眠は、ストレス耐性を高め、筋肉の回復を促進します。
- ・リラクゼーション:お風呂でのリラックスタイムや好きな音楽を聴くなど、自分なりのリラクゼーション方法を見つけることが大切です。
「ストレスと顎の痛みは切っても切れない関係にある」
これは私が患者さんによく伝える言葉です。ストレスを完全になくすことは難しいですが、上手に管理することで、顎関節への負担を大幅に軽減できます。
専門医に相談すべき顎痛のサイン
矯正治療中の軽度の不快感や痛みは一般的ですが、以下のような症状がある場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。
顎関節の問題は、放置すると慢性化したり、より深刻な症状を引き起こしたりする可能性があります。早期発見・早期治療が重要です。
要注意の症状と対応策
- ・強い痛みや腫れ:顎関節部分に強い痛みや腫れがある場合は、炎症が起きている可能性があります。
- ・開口制限:口が十分に開かない、または開閉時に引っかかりを感じる場合は、関節円板の異常が疑われます。
- ・異常音の増加:顎を動かす際のカクカク音やポキポキ音が増加した場合は、関節の状態が変化している可能性があります。
- ・頭痛や耳痛の併発:顎の痛みに加えて、頭痛や耳痛が併発する場合は、顎関節症が進行している可能性があります。
- ・噛み合わせの急な変化:突然噛み合わせが変わったと感じる場合は、顎関節や歯の位置に問題が生じている可能性があります。
これらの症状がある場合は、自己判断で対処せず、必ず担当の歯科医師に相談してください。適切な診断と治療が、症状の早期改善につながります。
むらせ歯科茂原院のような矯正治療と顎関節症治療の両方に対応している歯科医院では、矯正治療中の顎関節の問題にも適切に対応できます。特に不正咬合(悪い歯並び)の多くは顎関節にトラブルを持つ患者さんが多いため、矯正治療と顎関節症治療を並行して行うことが重要です。
まとめ:快適な矯正治療のために
歯列矯正による顎痛は、適切な対応と予防策で大幅に軽減できます。この記事でご紹介した5つの専門的アプローチ(スプリント療法、マウスピース型矯正装置の活用、咬合調整、顎関節運動訓練、適切な矯正装置の選択)と日常生活での工夫を取り入れることで、より快適な矯正治療が可能になります。
矯正治療は、美しい歯並びを得るだけでなく、噛み合わせの改善や顎関節の健康維持にも大きく貢献します。特に、むらせ歯科茂原院のような総合的な口腔ケアを提供する歯科医院では、矯正治療と同時に顎関節症の改善も行うことができます。
顎の痛みや違和感を感じたら、我慢せずに早めに専門医に相談することが大切です。適切な対応と継続的なケアで、健康的な口腔環境を維持しながら、理想の歯並びを手に入れましょう。
最後に、矯正治療は一人ひとりの症状や状態に合わせたオーダーメイドの治療です。ご自身に最適な治療法を見つけるためにも、専門医との十分なコミュニケーションを大切にしてください。






