矯正専門医が解説|装置トラブル時の応急処置と正しい対応方法
2026年01月29日
矯正専門医が解説|装置トラブル時の応急処置と正しい対応方法

矯正治療中のトラブル、突然の不安をどう乗り越えるか
矯正治療を受けている方なら、誰もが一度は経験する「装置のトラブル」。
ワイヤーが外れた、ブラケットが取れた、装置が口の中に刺さって痛い・・・そんな予期せぬ出来事に直面したとき、どう対処すればいいのか分からず不安になりますよね。特に夜間や休日、旅行先など、すぐに歯科医院へ駆け込めない状況では、その不安はさらに大きくなります。
矯正装置は歯並びを整えるための重要な道具ですが、日常生活の中で様々な力が加わるため、トラブルが起きることは決して珍しくありません。実際、矯正治療を受けている患者さんの約1割が、治療期間中に何らかの装置トラブルを経験しているというデータもあります。
しかし、正しい知識と対処法を知っていれば、慌てることなく冷静に対応できます。
この記事では、矯正専門医の視点から、装置トラブルが起きたときの応急処置と正しい対応方法について詳しく解説します。トラブルの種類別の対処法、絶対に避けるべき行動、そして歯科医院への連絡タイミングまで、実践的な情報をお届けします。
矯正装置トラブルの種類と見分け方
矯正治療中に起こりうるトラブルは、装置の種類や部位によって異なります。
まず、どこで何が起きているのかを正確に把握することが、適切な対処への第一歩です。ここでは、よくあるトラブルのパターンと、その見分け方について説明します。
ワイヤーが外れた場合の特徴
ワイヤー矯正で最も多いトラブルの一つが「ワイヤーの外れ」です。ワイヤーには「アーチワイヤー」と「リガチャーワイヤー」の2種類があり、それぞれ役割が異なります。アーチワイヤーは歯を動かす主要なワイヤーで、リガチャーワイヤーはブラケットとアーチワイヤーを固定する細いワイヤーです。
アーチワイヤーが外れた場合、奥歯の部分でワイヤーの端が飛び出してくることが多く、頬や歯茎に当たって痛みを感じます。一方、リガチャーワイヤーが外れた場合は、ブラケットの横でねじれた部分が飛び出してチクチクとした違和感があります。
どちらのワイヤーが外れたのかを確認することで、適切な応急処置を選択できます。

ブラケットが外れた場合の症状
ブラケットは歯の表面に接着されている小さな装置です。固い食べ物を噛んだり、強い衝撃を受けたりすると外れることがあります。特に、銀歯やセラミックなどの被せ物がある歯は、天然歯と比べて外れやすい傾向があります。
ブラケットが外れると、装置が宙ぶらりんの状態になり、口の中で回転したり動いたりします。完全に外れた場合は、ワイヤーから外れて口の中で遊離することもあります。痛みはそれほど強くないことが多いですが、違和感や不快感は感じるでしょう。
外れたブラケットは保管しておき、次回の診察時に持参することが大切です。
装置が口の中に当たって痛い場合
矯正装置を付けてから数日間は、装置が唇や頬の内側に当たって痛みを感じることがあります。これは装置に慣れていないための一時的な症状ですが、ワイヤーの端が飛び出している場合や、ブラケットが外れて位置がずれている場合は、粘膜を傷つけて口内炎ができることもあります。
特に奥歯の部分でワイヤーが飛び出していると、頬の粘膜に刺さって強い痛みを感じます。この場合は、早めの対処が必要です。
自宅でできる応急処置の具体的な方法
装置トラブルが起きたとき、すぐに歯科医院へ行けない状況もあります。
そんなときに知っておきたいのが、自宅でできる応急処置の方法です。ここでは、トラブルの種類別に、安全で効果的な応急処置の手順を詳しく説明します。ただし、これらはあくまでも一時的な対処法であり、後日必ず歯科医院で適切な処置を受けることが前提です。
ワイヤーが外れたときの対処法
アーチワイヤーが外れた場合、まずは元の位置に戻せるかどうかを確認します。清潔な手で、そっとワイヤーをブラケットに差し込んでみてください。元の位置に戻せた場合は、矯正用ワックスでワイヤーとブラケットを固定しておきます。
元の位置に戻せない場合や、ワイヤーの端が飛び出して頬や歯茎に当たっている場合は、矯正用ワックスを米粒大くらいの大きさに丸めて、飛び出している部分を覆います。ワックスを付ける前に、ティッシュなどで該当部分を軽く乾燥させると、ワックスがくっつきやすくなります。
どうしてもワイヤーが粘膜に刺さって痛い場合は、爪切りやニッパーなどで飛び出した部分を慎重にカットすることもできますが、口の中を傷つけないよう十分注意が必要です。自分で切るのが難しい場合は、無理をせず歯科医院へ連絡しましょう。
リガチャーワイヤーが外れた場合は、割り箸の先や爪楊枝などを使って、飛び出した部分をアーチワイヤーの下側に押し込みます。これだけで違和感がかなり軽減されます。

ブラケットが外れたときの対処法
ブラケットが外れた場合、無理に引っ張ったり取り除いたりしないでください。ブラケットが完全に外れてワイヤーから離れた場合は、清潔なティッシュに包んで保管し、次回の診察時に持参します。
ブラケットがワイヤーに引っかかったまま宙ぶらりんになっている場合は、矯正用ワックスでブラケットを歯に固定しておきます。これにより、ブラケットが口の中で動いて不快感を感じることを防げます。
外れたブラケットの位置がずれると治療計画に影響するため、できるだけ早めに歯科医院を受診することが大切です。
装置が口の中に当たって痛いときの対処法
装置が唇や頬の内側に当たって痛い場合、矯正用ワックスが最も効果的です。痛みを感じる部分に当たる装置の上に、ワックスを付けてカバーします。ワックスは柔らかいので、装置と粘膜の間のクッションとなり、痛みや違和感を軽減してくれます。
口内炎ができてしまった場合は、口内炎用の軟膏を塗ることも有効です。また、氷嚢で皮膚の上から冷やしたり、氷を口の中で転がして冷やしたりすると、痛みが和らぎます。
痛みがひどくて我慢できない場合は、市販の鎮痛剤を服用しても構いません。ただし、痛みが長引く場合は、装置が合っていない可能性もあるため、歯科医院に相談してください。
絶対に避けるべき行動とそのリスク
装置トラブルが起きたとき、焦って自己判断で対処すると、かえって状況を悪化させることがあります。
ここでは、絶対に避けるべき行動と、それによって生じるリスクについて説明します。正しい知識を持つことで、取り返しのつかない失敗を防ぐことができます。
自分でワイヤーを切る・外すリスク
ワイヤーが飛び出して痛いからといって、自己判断でワイヤーを大きくカットしたり、完全に外したりするのは危険です。ワイヤーは歯を動かすための重要な装置であり、勝手に外すと治療計画が大きく狂ってしまいます。
また、ワイヤーを切る際に口の中を傷つけたり、切ったワイヤーの破片を誤って飲み込んだりするリスクもあります。どうしても自分で対処する必要がある場合は、飛び出した部分を最小限だけ慎重にカットし、すぐに歯科医院へ連絡してください。
装置を無理に元に戻そうとするリスク
外れたブラケットや装置を無理に元の位置に戻そうとすると、歯や歯茎を傷つける可能性があります。また、装置を誤った位置に固定してしまうと、歯が間違った方向に動いてしまい、治療期間が延びる原因になります。
装置が外れた場合は、応急処置として固定するだけにとどめ、正しい位置への再装着は必ず歯科医師に任せましょう。
トラブルを放置するリスク
「少しの違和感だから大丈夫」「次の診察日まで待てばいい」と考えて、装置トラブルを放置するのは避けてください。放置すると、以下のようなリスクがあります。
- 歯並びの後戻りが起こり、治療期間が延びる
- 装置が粘膜を傷つけ、口内炎や炎症が悪化する
- 外れた装置を誤って飲み込む可能性がある
- 治療計画が狂い、追加費用が発生する
一般的には、次の診察日まで4〜5日程度であれば、そのままでも問題ないケースが多いですが、10日以上空く場合は後戻りのリスクが高まります。自己判断せず、必ず歯科医院へ連絡して指示を仰ぐことが大切です。

歯科医院への連絡タイミングと伝えるべき情報
装置トラブルが起きたら、まず歯科医院へ連絡することが最優先です。
しかし、「どのタイミングで連絡すればいいのか」「何を伝えればいいのか」と迷う方も多いでしょう。ここでは、歯科医院への連絡タイミングと、スムーズな対応のために伝えるべき情報について説明します。
すぐに連絡すべきケース
以下のような状況では、できるだけ早く歯科医院へ連絡してください。
- ワイヤーが粘膜に深く刺さって出血している
- 強い痛みがあり、市販の鎮痛剤でも効かない
- 装置を誤って飲み込んでしまった
- ブラケットが複数個外れた
- アーチワイヤーが完全に外れてしまった
これらのケースでは、緊急対応が必要になることもあるため、すぐに連絡して状況を伝えましょう。
次の診察日まで待てるケース
以下のような状況では、応急処置をした上で、次の診察日に対処してもらうことも可能です。
- リガチャーワイヤーが少し飛び出している程度
- ブラケットが1個だけ外れたが、痛みはない
- 矯正用ワックスで対処できる程度の違和感
ただし、次の診察日まで10日以上空く場合は、念のため連絡して相談することをおすすめします。
歯科医院に伝えるべき情報
歯科医院へ連絡する際は、以下の情報を伝えるとスムーズです。
- 外れた部分(奥歯、前歯、ブラケット、ワイヤーなど)
- 何が外れたのか(アーチワイヤー、リガチャーワイヤー、ブラケットなど)
- いつ外れたのか(日時)
- 痛みや違和感の有無と程度
- 出血や腫れの有無
- 自分で行った応急処置の内容
これらの情報があれば、歯科医師が状況を正確に判断し、適切な指示を出すことができます。
矯正治療中の装置トラブルを予防する日常のケア
装置トラブルは完全に防ぐことはできませんが、日常のケアで発生リスクを減らすことは可能です。
ここでは、矯正治療中に気をつけるべき生活習慣と、装置を長持ちさせるためのポイントについて説明します。
食事で気をつけるべきこと
矯正装置を付けていても、ほとんどの食べ物は食べられますが、以下の点に注意が必要です。
- 前歯で噛みちぎったり、噛み切ったりしない(りんご、肉などは小さく切ってから奥歯で噛む)
- 固い食べ物は避けるか、小さく切って食べる(せんべい、ナッツ、氷など)
- 粘着性の高い食べ物は控える(キャラメル、ガム、餅など)
食事の後は必ず歯磨きをして、装置の周りに食べ物が詰まらないようにしましょう。汚れが溜まると、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
歯磨きで気をつけるべきこと
矯正装置を付けていると、汚れが溜まりやすく、むし歯や歯周病になりやすくなります。以下のポイントを意識して、丁寧に歯磨きをしてください。
- 歯ブラシはいつも持ち歩き、食事の後は必ず歯磨きをする
- ブラケットと歯茎の間、ワイヤーの下もよく磨く
- 歯間ブラシやタクトブラシを使って、細かい部分の汚れを落とす
- 鏡で汚れがしっかり落ちたかどうかを確認する
歯磨きの際に装置を強くこすりすぎると、ブラケットが外れる原因になるため、適度な力加減で磨くことが大切です。
装置に触らない・いじらない
矯正装置を付けてから数日間は、痛みや違和感がありますが、指や舌で触ると装置が壊れる原因になります。慣れるまでは違和感があっても、できるだけ触らないようにしましょう。
また、スポーツをする際は、マウスガードを使用するなど、装置を保護する工夫も大切です。

まとめ|正しい知識と対応で安心の矯正治療を
矯正治療中の装置トラブルは、誰にでも起こりうることです。
大切なのは、トラブルが起きたときに慌てず、正しい応急処置を行い、速やかに歯科医院へ連絡することです。自己判断で装置を外したり、トラブルを放置したりすると、治療期間が延びたり、追加費用が発生したりするリスクがあります。
矯正用ワックスは、装置トラブル時の強い味方です。常に持ち歩いておくと、いざというときに安心です。また、日常の食事や歯磨きに気をつけることで、装置トラブルの発生リスクを減らすことができます。
矯正治療は長期間にわたる治療ですが、正しい知識と対応を身につけることで、安心して治療を続けられます。トラブルが起きたときは、一人で悩まず、すぐに歯科医院へ相談してください。私たち矯正専門医は、患者さんが安心して治療を受けられるよう、全力でサポートします。
むらせ歯科茂原院では、矯正治療中のトラブルにも迅速に対応しています。お子さんの矯正治療では、Ⅰ期治療とⅡ期治療の2段階で行い、可能な限りⅠ期治療で完了させることで、患者さんの身体的・経済的負担を軽減しています。歯並びが悪くなる原因である「口腔周囲筋の機能不全」を改善する歯列矯正用咬合誘導装置を使用し、根本的な原因からアプローチします。
矯正治療に関するご相談や、装置トラブルでお困りの際は、お気軽にむらせ歯科茂原院へお問い合わせください。経験豊富な専門医が、一人ひとりに合わせた最適な治療とサポートを提供いたします。






