すきっ歯・前歯のガタガタは小児矯正でどう治す?原因別に装置と方針を解説
2026年01月21日
お子さんの前歯に隙間が目立ったり、ガタガタと重なり合って生えてきたりすると、親御さんとしては「このまま放っておいていいのだろうか」と心配になりますよね。
実は、子どもの歯並びは成長過程で一時的に隙間ができたり、乱れたりすることがあります。しかし、原因によっては早期の治療介入が必要なケースも存在します。
小児矯正では、歯並びが悪くなる「原因」そのものにアプローチすることで、将来的な歯並びの問題を予防し、お子さんの肉体的・経済的負担を最小限に抑えることができます。
この記事では、すきっ歯や前歯のガタガタといった歯並びの問題について、その原因から治療方法、装置の種類、治療開始時期まで、歯科医師の視点から詳しく解説していきます。
子どものすきっ歯・前歯のガタガタとは?

子どもの歯並びの問題は、大きく分けて「すきっ歯(空隙歯列)」と「前歯のガタガタ(叢生)」の2つのパターンがあります。
「すきっ歯」は、歯と歯の間に隙間がある状態で、正式には「空隙歯列(くうげきしれつ)」や「歯間離開歯(しかんりかいし)」といいます。特に前歯の中心に隙間がある状態は「正中離開(せいちゅうりかい)」と呼ばれます。
一方、「前歯のガタガタ」は歯が重なり合って生えている状態で、専門用語では「叢生(そうせい)」といいます。永久歯が生えるスペースが不足しているために起こります。
発育空隙について・・・一時的なすきっ歯は正常
乳歯が生え揃った後、顎の成長によって一時的に歯列に隙間ができることがあります。これを「発育空隙(はついくくうげき)」といい、「みにくいアヒルの子の時期」とも呼ばれます。
永久歯は乳歯よりも大きいため、永久歯がスムーズに生え変わるために必要なスペースなのです。永久歯が生え揃うことによって、少しずつ隙間は埋まっていきます。
乳歯の段階できれいに隙間なく並んでいると、永久歯になった時に歯が並ぶスペースがなくなり、歯並びが乱れてしまう可能性が高まります。
治療が必要なケースと経過観察で良いケース
すべてのすきっ歯や前歯のガタガタが治療を必要とするわけではありません。
乳歯のすきっ歯は永久歯がきれいに生えてくるための大切なスペースなので、基本的には経過観察となります。また、永久歯と乳歯が混ざって生える「混合歯列期(8〜10歳)」の上前歯は、ほとんどの場合が一時的にすきっ歯になりますが、犬歯が生えてくることで徐々に埋まっていきます。
しかし、真ん中の歯に3mm以上の隙間があるケースや、犬歯が生えた後も隙間が閉じないケース、必要以上に隙間が大きい場合などは、矯正治療が必要になることがあります。
すきっ歯・前歯のガタガタになる原因
子どもの歯並びが悪くなる原因は、先天的な要因と後天的な要因に分けられます。原因を特定することで、適切な治療方針を立てることができます。
口腔周囲筋の機能不全
歯並びが悪くなる最大の原因は「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全です。
普段何もしていない時に、舌が常に歯に触れている状態を「舌癖(ぜつへき)」といいます。つまり、常に歯に対して一定の力が与えられている状態です。こんな小さな力でも、長期間続くと歯並びは崩れてしまいます。
正しい舌の位置は、舌先が上の前歯のつけねの少し手前あたりに当たっている状態です。舌が低い位置にあると、上顎の成長を妨げ、歯並び悪化の原因となります。
口呼吸の影響
口で呼吸していると舌は低位になり、上顎の成長を妨げます。また、病原菌が喉の粘膜から直接取りこまれてしまうため、健康のためにも良いことではありません。
正常な呼吸は鼻で行いますが、口呼吸が癖になっている子どもが多くみられます。口呼吸になる原因の中でも、舌が正しい位置に置かれず下がってしまう「低位舌」が多く、これは口周りの筋力低下だけでなく、上顎前突(出っ歯)や空隙歯列(すきっ歯)などの不正咬合を引き起こす要因になります。
指しゃぶりなどの悪習癖
3歳以降も頻繁に指しゃぶりを続けていると、前歯の裏側に力が加えられるため、すきっ歯や出っ歯の原因になります。
指しゃぶりは、生後2〜4ヶ月頃から始まる行為で、最初は遊びとして始まり、幼児においては気持ちを落ち着かせるために行うことが多いです。3歳頃も頻繁に指しゃぶりをしている場合は、改善したほうがよいかもしれません。
他に気を紛らわせる遊びをしたり、指しゃぶりをしなかったことを褒めたりして、徐々に頻度を減らしていくことが大切です。
歯と顎の大きさのバランス
顎の大きさに対して歯が小さい場合は、すきっ歯になることがあります。逆に、歯のサイズが大きく顎が小さい場合には、叢生などガタガタの歯並びになってしまいます。
歯の大きさと顎の大きさがアンバランスなお子さまは、矯正治療が必要になる可能性が高まります。
先天的な要因
生まれつき歯の本数が少ない「先天性欠損」や、歯のサイズが小さい「矮小歯(わいしょうし)」の場合は、歯が並ぶ土台部分に余分なスペースができるため、すきっ歯になりやすくなります。
逆に、歯の本数が生まれつき多い「過剰歯」は、歯茎の中に埋まったまま生えてこない可能性が高く、その埋まった歯が邪魔をして永久歯が正常に生えず、歯間に隙間ができる場合があります。過剰歯は上顎前歯部分に多く、正中離開などになりやすい傾向があります。
上唇小帯の異常
上唇と歯茎をつなぐ上唇小帯(ヒダ)は、赤ちゃんの頃は太くて長いのですが、成長に伴って少しずつ小さくなっていきます。しかし、稀に正常に退縮をしない場合があり、永久歯が生える際に邪魔となってすきっ歯になる場合があります。
すきっ歯・前歯のガタガタを放置するリスク

子どもの歯並びの問題を放置すると、さまざまなデメリットが生じます。
虫歯・歯周病のリスク増加
歯と歯の間に隙間があったり、歯が重なり合っていたりすると、食べかすが詰まりやすくなり、適切なケアも難しくなることから虫歯や歯周病の発症リスクが高くなってしまいます。
治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いており、歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。ハミガキを適切に行ってお口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
発音障害
歯の間から空気が漏れるため、正しい発音ができない場合があります。特に「さ行」や「た行」を発音する際に歯と歯の隙間から空気が漏れてしまい、言葉がうまく伝えることができず、滑舌が悪く聞こえることがあります。
見た目のコンプレックス
すきっ歯は、国によって「美人」や「幸運の歯」と言われることもありますが、日本では「まぬけ顔」「貧乏に見える」など悪い印象をもたれるため、コンプレックスに感じる人が多くみられます。
年を重ねるごとに症状が悪化することが多く、歯の隙間が目立つため、コンプレックスに感じる方も多くいらっしゃいます。特に前歯のすきっ歯の場合は、口を開けるとすぐに目につき、人と会話することに消極的になる可能性があります。
小児矯正の治療開始時期
「いつから矯正を始めればいいのか」は、親御さんからよく受ける質問です。
お子さんのすきっ歯の治療開始時期については、上の前歯が生え変わる7歳頃が一般的ですが、成長に伴う一時的なすきっ歯(発育空隙)であれば、永久歯が生え揃うにつれて自然と隙間が埋まることも多く、治療が必要ないこともあります。
年齢別のアプローチ
むらせ歯科では、年齢に応じた段階的なアプローチを行っています。
0歳〜2歳・・・歯並びはお口だけの問題ではなく、座り方、姿勢、抱っこの仕方が原因で悪くなってしまうことがあります。親御さんと一緒にお子様の正しい「姿勢」を獲得する訓練を行います。
3歳〜5歳・・・インファントという取り外しできるマウスピース型の装置を1日2回10分〜20分利用することで、顎の成長を促し、歯並びが悪くなる原因を除去していきます。
6歳〜9歳・・・マイオブレーストレーナーという取り外し式の装置と舌・口・呼吸の訓練を行います。歯並びが悪くなる口呼吸、舌の突き出し、指しゃぶりなどを改善します。
早期相談の重要性
特にお子様の歯並びの場合、親御さんが「矯正した方がいいかな?」と思った時は、適切な治療開始時期を逃してしまっていることが多々あります。
大人の歯(前歯)が生えてきたら、治療するしないにかかわらず一度ご相談にお越しください。プロの目で診断することで、今後どのように歯が動いていくのかを予測できますので、治療が必要になるか否か、治療開始時期はいつ頃がいいかなどをお話しさせて頂きます。
小児矯正の治療方法と装置
小児矯正は、一般的に2段階で行われます。前半の治療を「I期治療」、後半の治療を「II期治療」といいます。
I期治療・・・原因にアプローチする予防矯正
I期治療では、歯を直接動かすのではなく、悪い歯並びになってしまう「原因」をオリジナル装置やトレーニングで改善していく治療法になります。
むらせ歯科では「歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)」という方法を採用しています。これは、歯並びが悪くなる原因である「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全に着目した治療法です。
マイオブレーストレーナーという取り外し式の装置と舌・口・呼吸の訓練を組み合わせることで、歯並びが悪くなる口呼吸、舌の突き出し、指しゃぶりなどを改善します。
ご自宅でのトレーニングの重要性
トレーニングというと「難しそう」「続けられるかな……」と不安に思われるかもしれません。トレーニング自体は難しくはありませんし、痛みも一切伴いません。しかし、「継続」が大切になります。
このトレーニングを行わないと効果が半減してしまうため、お子様に継続してもらうため、親御さんの協力が必要となります。
トレーニング方法は、専門のトレーニングを受けた専任スタッフがお伝えします。また、ご自宅でも精度の高いトレーニングを実施してもらうため、ご自宅のパソコンや携帯で閲覧できるオリジナルアプリケーションをダウンロードし、アニメのキャラクターと一緒に楽しくトレーニングができる環境を整えています。
II期治療・・・歯並びの仕上げ
I期治療が終わり、顎(アゴ)の補正が完了しても、歯並びそのものがでこぼこしていたり、歯が回転して生えていたり、上下の噛み合わせが良くなかったりすることがあります。その場合に、仕上げのII期治療を行います。
本格矯正には、「唇側マルチブラケット矯正(ワイヤー型)」と「マウスピース矯正(インビザライン)」の2種類があります。
唇側マルチブラケット矯正は、歯にワイヤー型の装置を取り付けて行う治療です。すべての歯に矯正装置を装着し、理想的な歯並び、かみ合わせを目指す治療です。
マウスピース矯正(インビザライン)は、透明なマウスピース型の矯正装置を定期的に取り換えながら、歯並びを整える治療です。マウスピース矯正のみ矯正中のホワイトニングが可能です。
可能な限りI期治療で完了を目指す方針
矯正治療は一定の期間と費用が掛かりますので、可能であればI期治療で終了した方が好ましいです。期間も短く済み、費用もそれほど掛かりませんので。
むらせ歯科は、「歯並びを創造」することを第一に考えていますが、それと同じレベルで「患者様の肉体的負担・経済的負担を抑える」ことも重要視しています。そのため、可能な限りI期治療で完了するよう治療を進め、どうしてもII期治療まで必要な場合は、しっかりとお子さんと親御さんにご説明させて頂き治療を進めていきます。
矯正治療の費用と流れ

矯正治療の費用は症状や治療内容によって異なりますが、約22〜110万円(税込)ほどかかります。自費診療となるため、健康保険の対象外です。
治療の流れ
①矯正相談・・・歯並びの不安や疑問点などについて、お伺いし、最適な矯正治療プラン、時期、金額などについて、詳しくご説明します。当院に通院されている患者様については、相談料はかかりません。
②資料取り・・・現在のお口の状態や身体の状態などを詳しく把握するための検査を行わせていただきます。検査では、お口やお顔の写真の撮影、レントゲン撮影、お口の内のスキャンを行います。
③診断・・・資料取りを行っていただいてから2週間後、再度ご来院頂いて資料の診断結果についてご説明させていただきます。この診断では、患者様の現在の歯並びやお口の状態について詳しくご説明させていただき、治療の流れや費用などについてご案内させていただきます。資料取り・診断料は33,000円(税込)です。
④治療開始・・・診断の結果を踏まえて、治療に移ります。永久歯が生えそろう前のお子様の治療の場合、予防矯正から始める場合があります。予防矯正の料金は440,000円、再診料は3,300円/月です。
⑤メンテナンス・保定治療・・・きれいに並んだ歯並びを維持するための治療です。歯並びというのは、永久的なものではありません。歯は、加齢変化で徐々にでこぼこがでてくるものなのです。きれいに並んだ歯をずっときれいに維持するためには保定装置を用いたメインテナンスが必要になります。
医療費控除の活用
矯正治療は費用が高くなりがちですが、確定申告の医療費控除を活用することで所得税還付を受けて結果的に費用負担を軽減できます。控除対象には治療費だけでなく通院にかかる交通費も含まれ、家族分の費用も合算できます。
還付金は実際に支払った医療費と所得税率に応じて計算されます。申告は医療費を支払った翌年から5年間可能で、分割払いで支払った場合も実際に支払った年度ごとに控除できます。
矯正治療のメリットとリスク
矯正治療のメリット
矯正治療には多くのメリットがあります。
まず、噛み合わせが整うことで、食べ物をしっかりと噛めるようになり、消化吸収が良くなります。また、歯磨きがしやすくなることで、虫歯や歯周病になりにくくなります。
見た目の改善も大きなメリットです。歯並びが整うことで、笑顔に自信が持てるようになり、お子さんの心理的な負担も軽減されます。
矯正治療に伴うリスクと副作用
矯正治療にはいくつかのリスクや副作用も存在します。
矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間〜1、2週間で慣れてきます。
歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。また、矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことや、歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
まとめ
お子さんのすきっ歯や前歯のガタガタは、原因を正しく特定し、適切な時期に適切な治療を行うことで、将来的な歯並びの問題を予防できます。
小児矯正では、歯を直接動かすのではなく、歯並びが悪くなる「原因」そのものにアプローチすることで、お子さんの肉体的・経済的負担を最小限に抑えることができます。
むらせ歯科では、「歯並びを創造」することと「患者様の負担を抑える」ことを同等に重視し、可能な限りI期治療で完了するよう治療を進めています。
大人の歯(前歯)が生えてきたら、治療するしないにかかわらず、まずは一度ご相談ください。プロの目で診断することで、お子さんの歯並びの将来を予測し、最適な治療開始時期をご提案させていただきます。
お子さんの笑顔と健康な歯並びのために、早めのご相談をお待ちしております。






