子どもの歯ぎしりは成長の証?小児歯科医が教える原因と対策
2026年01月29日
子どもの歯ぎしりは成長の証?小児歯科医が教える原因と対策

夜中に響く「ギリギリ」という音・・・それは成長のサイン?
夜、お子さんの寝室から「ギリギリ」という歯ぎしりの音が聞こえてきたことはありませんか?
あまりにも大きな音に、「歯が削れてしまうのでは」「何か病気なのでは」と心配になる親御さんは少なくありません。実際、小児歯科の診察室でも「子どもの歯ぎしりが心配で」と相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
結論から申し上げると、子どもの歯ぎしりの多くは「成長の過程で起こる生理現象」であり、過度に心配する必要はありません。むしろ、次に生えてくる歯の位置や顎の位置を決めようとする、成長に必要な行動なのです。
とはいえ、すべての歯ぎしりが問題ないわけではありません。この記事では、小児歯科医の視点から、子どもの歯ぎしりの原因、見守るべきケースと受診すべきケース、そして家庭でできる対策について詳しく解説していきます。
子どもの歯ぎしりはいつから始まる?どのくらいの子がしているの?
子どもの歯ぎしりは、上下の前歯が生えそろってくる「生後8カ月ごろ」から始まります。
この時期、赤ちゃんは上下の歯が初めて接触することで、歯ぎしりの音を出し始めるのです。その後、1歳くらいで奥歯が生えてきて、2歳半にかけて乳歯が生え揃う過程で、脳がかみ合わせを整えようとするため、歯ぎしりの回数が増えることがあります。

世界の子どもの約5~50%が歯ぎしりを経験
研究によると、世界の小児人口の5~50%に歯ぎしりが見られると報告されています。この結果の幅が広い理由は、ほとんどが親の報告に基づいているため、研究そのものが難しいことにあります。
日本国内でも、子どもの10人に2~3人が睡眠中に歯ぎしりや食いしばりをしているといわれています。つまり、決して珍しい現象ではないのです。
中学生くらいまで続くことも
子どもの歯ぎしりは、中学生くらいまで続くこともあります。
ただし、年齢とともに自然に減少する傾向にあることが分かっています。これは、永久歯への生え変わりが完了し、かみ合わせが安定してくるためです。興味深いことに、年齢とともに減少するという研究結果には、「単に夜間に親が子どもの寝室を訪れる頻度が減ったから」という考察もあるようです。
子どもの歯ぎしりの原因とは?大人とは違うメカニズム
大人の歯ぎしりは、ストレスや睡眠時無呼吸症候群、顎関節症などとの関連が指摘されています。
しかし、子どもの場合は大人とは異なるメカニズムで歯ぎしりが起こることが多く、病気が原因である可能性は少ないため、治療が必要になることはほとんどありません。
成長に伴う生理的な原因
子どもの歯ぎしりの主な原因は、「成長に伴うかみ合わせの変化への順応」です。具体的には以下のような理由があります。
- 顎の位置を決めるため・・・歯が生えてくる際に、歯ぎしりをすることで顎の位置を決めていると考えられています
- 永久歯のスペースを作るため・・・乳歯が全て生えそろった後の歯ぎしりは、永久歯が生えてくる際にスペースを作る目的があるとされています
- かみ合わせの調整・・・乳歯から永久歯への生え変わりの期間中、上下の歯が一時的にきちんと噛み合っていない場合に、歯や顎の位置を調整しようとして無意識のうちに歯ぎしりが起こります
- 歯が生えるときの痛みへの対応・・・乳歯が永久歯に生え変わる時期に、歯が生えるときの痛みへの対応として歯ぎしりが起こることもあります

睡眠周期との関係
大阪大学の研究によって、子どもの歯ぎしりの発生メカニズムが世界で初めて解明されました。
この研究では、明らかな睡眠の病気がなく、発達にも問題のない6歳から15歳の子どもに睡眠検査を実施したところ、歯ぎしりをする子どもでは、レム睡眠に向けてノンレム睡眠が浅くなり交感神経系活動が高まる間に歯ぎしりが集中して発生し、睡眠周期ごとの歯ぎしりの増減があることが分かりました。
また、約90%の歯ぎしりが短い覚醒や体動とともに発生することも明らかになっています。つまり、健康な子どもでは、歯ぎしりは睡眠周期に伴う脳内活動の変化に対して、歯ぎしりをする顎の神経機構が過剰に反応することで生じる可能性があるのです。
心理的ストレスも影響する
大人と同様、子どももストレスによって歯ぎしりをすることがあります。
学校でのテストや決められた行動が大きなストレスになって歯ぎしりという症状が出ている可能性もあります。親や兄弟と仲が悪いといったことも、歯ぎしりや食いしばりを起こすための十分なストレスになり得ます。また、責任感が強い子、神経症を患っている子に多いという報告もあります。
さらに、睡眠時間が8時間未満や頻繁に目が覚める子には歯ぎしりが多いようです。睡眠時に電気をつけたり、物音を立てたりすることも好ましくありません。受動喫煙に晒されている場合も、歯ぎしりが多くなるという研究結果もあります。
歯並びや骨格は関係ない?
興味深いことに、歯列の状態や顔面の骨格の形態などは、子どもの歯ぎしりには影響がないと考えられています。
したがって、子どものブラキシズム(歯ぎしりや食いしばりの総称)を抑制する目的で、矯正治療などを行うことは科学的に支持されていません。
見守るべきケースと受診すべきケース・・・判断のポイント
子どもの歯ぎしりの多くは成長の過程で起こる生理現象であり、基本的には様子を見ることで問題ありません。
しかし、すべての歯ぎしりが「様子見」で良いわけではありません。ここでは、見守るべきケースと受診すべきケースの判断ポイントを解説します。
基本的には様子を見て大丈夫なケース
以下のような場合は、過度に心配せず、成長の一環として見守ってあげてください。
- 音は大きいが、歯に目立った異常がない
- 日中の様子に変わりがなく、元気に過ごしている
- 食事や会話に支障がない
- 歯のすり減りが軽度である
- 顎や顔に痛みを訴えない
激しい音で歯ぎしりしていても、あわてて受診する必要はありません。実際に歯が削れていたり、歯が欠けたりすることはほとんどないのです。
歯科医院への受診を検討すべきケース
一方で、以下のような症状が見られる場合は、早めに小児歯科を受診することをおすすめします。
- 歯が必要以上にすり減っている・・・エナメル質が欠けたり、歯が異常にすり減っている場合
- 歯がぐらぐらしている・・・歯ぎしりによって歯に負担がかかりすぎている可能性があります
- 朝起きた後、顎や顔に痛みがある・・・顎関節への負担が大きい可能性があります
- 食事中に歯が痛む・・・歯や歯茎にダメージが及んでいる可能性があります
- 頻繁に出血する、血が止まらない・・・歯が歯ぐきに当たって血が出ることがあります
- 不正咬合(受け口など)が見られる・・・歯ぎしりだけでなくかみ合わせの問題がある場合、矯正治療が必要になることがあります
- 永久歯に生え変わった後も激しい歯ぎしりが続く・・・中学生を過ぎても頻繁に激しい歯ぎしりをしている場合
将来への影響も考慮する

子どもの頃に歯ぎしりが多いと、将来、顎関節症を発症する可能性が3倍高くなるという報告があります。
永久歯に全て生え変わるころ、すなわち中学生を過ぎても激しい歯ぎしりをしょっちゅうしているようであれば、永久歯に破壊的なダメージを与えたり、顎関節症の原因となったりする可能性があるため、注意が必要です。
家庭でできる歯ぎしり対策と予防法
子どもの歯ぎしりに対して、現在のところ科学的に根拠がある治療法はありません。
基本的には経過観察をすることになりますが、家庭でできる対策もいくつかあります。ここでは、過剰な歯ぎしりを軽減させるために実践できる方法をご紹介します。
良質な睡眠環境を整える
睡眠時間が8時間未満や頻繁に目が覚める子には歯ぎしりが多いという報告があります。
以下のような点に注意して、お子さんの睡眠環境を整えてあげましょう。
- 十分な睡眠時間を確保する(8時間以上が目安)
- 就寝時は部屋を暗くする(電気をつけたままにしない)
- 静かな環境を作る(物音を立てない)
- 規則正しい生活リズムを心がける
- 寝る前のスマートフォンやタブレットの使用を控える
ストレスを溜めさせない工夫
歯ぎしりはストレスを発散するのに必要な行動である、とも言われています。
ある程度の歯ぎしりは、ストレス発散のためにむしろ行った方が良いとも考えられています。しかし、あまりに過剰なストレスがかかっている場合、その歯ぎしりが強く起こりすぎてしまい、歯を傷めてしまう可能性もあります。
普段からお子さんのメンタル面にも注意を払い、ストレスがたまりすぎていないか、ということをよく見てあげてください。問題があればストレスをどうやったら解消してあげられるか、という心理面からのアプローチも大切です。
日中の癖を直す
日中に上下の歯を食いしばる、カチカチと歯を合わせる、ギリギリとこすり合わせるというような癖がある場合、眠っている間に歯ぎしりをより引き起こしやすくなると言われています。
また、上下の歯を無駄に合わせるのは、歯へダメージを与え、様々な不快症状を起こす原因にもなります。そのような癖がある場合には、それが良くないことであると説明し、早めにやめさせるようにしましょう。
受動喫煙を避ける
受動喫煙に晒されている場合も、歯ぎしりが多くなるという研究結果があります。
お子さんの健康のためにも、家庭内での喫煙は控えることをおすすめします。
歯科医院での治療法・・・ナイトガードとマウスピース
大半の小児は、小児期以降に徐々に歯ぎしりが減少していくことが分かっています。
しかし、明らかな睡眠障害やストレスなどの心理的要因がある場合、または歯がすり減って痛い場合や顎関節症が生じているレベルであれば、歯科医院で対処療法を受けることができます。
ナイトガード(マウスピース)の装着
歯ぎしりや食いしばりによって顎や歯が痛くなったり、歯のすり減りが激しい場合は、対策として「ナイトガード」が処方される場合があります。
ナイトガードは透明なプラスチック製のマウスピースで、就寝中にだけ装着します。子どもの歯に合うように作られており、形はアスリートが運動時の歯の保護のために使うマウスピースに似ています。最初は慣れが必要ですが、歯ぎしりや食いしばりによるダメージから歯を守る効果があります。
ごくまれなケースですが、歯ぎしりによる歯のすり減りがひどい時は、3歳以降の幼児期に歯型をとってマウスピースを作ることがあります。幼児期はあごの成長や生え変わりがあるため、成長に合わせてマウスピースを作り替える必要があります。
マウスピース装着の注意点
ただし、マウスピースを装着することは顎の成長を阻害することに繋がるため、一般的には推奨されていません。
幼児期の成長は早く、半年もたたずにサイズが合わなくなり使えなくなることもあるため、定期的に歯科医院でチェックしてもらう必要があります。また、夜だけでなく昼間も頻繁に歯ぎしりや食いしばりが起こらない限りは、顎関節症を発症しない場合が多いです。

むらせ歯科茂原院の小児矯正アプローチ
むらせ歯科茂原院では、子どもの矯正治療に特化したサービスを提供しています。
子どもの矯正治療は「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2段階で行われますが、歯並びの状態によってはⅠ期治療のみで完了することもあります。Ⅰ期治療では、歯並びが悪くなる原因である「口腔周囲筋(舌・唇・頬の筋肉)」の機能不全を改善する「歯列矯正用咬合誘導装置」を使用します。
具体的には、口呼吸や舌癖などの問題を解決することで、歯並びの改善を目指します。年齢によって治療アプローチが異なり、0~2歳では姿勢の訓練、3~5歳ではインファントというマウスピース型装置の使用、6~9歳では歯列矯正用咬合誘導装置と舌・口・呼吸の訓練を行います。
患者さんの身体的・経済的負担を軽減するため、可能な限りⅠ期治療で矯正を完了させることを目指していますが、必要に応じてⅡ期治療も実施します。治療開始前には、お子さんと親御さんに十分な説明を行い、納得いただいた上で治療を進めています。
まとめ・・・子どもの歯ぎしりは成長の証、でも注意すべきサインも
子どもの歯ぎしりは、多くの場合、成長に伴う生理的な現象であり、過度に心配する必要はありません。
上下の前歯が生えそろう生後8カ月ごろから始まり、中学生くらいまで続くこともありますが、年齢とともに自然に減少する傾向にあります。子どもの歯ぎしりは、次に生えてくる歯の位置や顎の位置を決めようとする、成長に必要な行動なのです。
ただし、歯が必要以上にすり減っている、顎や顔に痛みがある、不正咬合が見られるなどの場合は、早めに小児歯科を受診することをおすすめします。また、家庭でできる対策として、良質な睡眠環境を整える、ストレスを溜めさせない、日中の癖を直すなどの工夫も有効です。
音が激しい時は大人が耳栓をするなど、長い目で見守ってあげることも大切です。お子さんの成長を温かく見守りながら、気になる症状があれば専門家に相談する、というバランスの取れた対応を心がけましょう。
むらせ歯科茂原院では、お子さんの歯並びや歯ぎしりに関する無料相談を実施しています。少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。専門的な視点から、お子さん一人ひとりに最適なアドバイスをさせていただきます。







